雛段に飾られた、清楚で煌びやかな雛人形は、時代を経ても変わらない日本古来の伝統文化の一つです。
美しいですよね。
しかし皆さん、
雛人形の飾り方、わかりますか?
いや、普通の人は多分、わからないと思います。
雛段は、大きく分けると、7段、5段、3段の3種類があり、それぞれに雛人形の飾り方の違いがあります。
また、関東と関西(京都)でも飾り方に違いがあります。
そこで今回は、雛人形の飾り方について調べて解説してみました。
関東と関西(京都)の雛人形の違いについても、飾り方とともに紹介しています。
皆様のお役に立てれば幸いです。
■雛人形の飾り方(7段)
《1段目》
左から:雪洞(ぼんぼり) 殿 お神酒※ 姫 雪洞
(※花の場合もあります)
屏風は親王(殿と姫)の後ろに配置。
現代風(新式)では左殿・右姫
古式および京式では右殿・左姫
ひな祭りの歌「うれしいひなまつり」の歌いだしの、
♪明かりをつけましょ ぼんぼりに~♪
の“ぼんぼり”こそ、1段目の左右に置く雪洞です。
雪洞と書いてぼんぼりと読むんですね。
豪華なデザインの灯篭に、長い柄を付けたようなものです。
昔の室内照明器具の一つですね。
ちなみに、ひな祭りの歌の2番の歌詞に出てくる“おだいり様”とは、
一段目の殿と姫の二人のことを表します。
詳細はこちら↓のページをご覧ください。
話がズレましたね。(笑)
そろそろ2段目の飾り方にいってみましょう。
《2段目》
三人官女(中央の官女は眉無し)
高坏2つ(官女の間に1つずつ)
立っている官女の数によって、高坏の置き方が変わります。
1人なら、真ん中。
2人なら、左右に1人ずつ。
2人のどちらが左か右か分からない場合は、前に出ている足で判断します。
右足が出てる方を雛段の左に置き、
左足が出てる方を雛段の右に置きます。
真ん中の官女には三方、
左の官女には加銚子、
右の官女には長柄銚子
をそれぞれ持たせます。
京式では、三方ではなく島台を使います。
ちなみに、高坏(たかつき)には、本物の桜餅や草餅をお供えするそうですが、現代ではミニチュア化しているので、この段に本物をお供えする必要はありません。
ここまでは、3段雛も飾り方は同じです。
《3段目》
五人囃子
左から:太鼓 大鼓 小鼓 笛 謡(扇を持ってる人)
三段目は、ひな祭りの歌にも出てくる、五人囃子(ごにんばやし)席です。
扇を持っている雛人形は謡(うたい)と言い、一番右側に置きます。
ちなみに、謡とは歌い手のこと。
バンド風に言うとボーカルですね。(笑)
ここまでは、5段雛も飾り方は同じです。
《4段目》
左から:右大臣 御膳 菱台2個 御膳 左大臣
ここで飾るのは随身(ずいじん)です。
左に若者の方(右大臣)※を飾り、
一番右に爺さん(左大臣)を飾ります。
※若いのと爺の区別が無い人形の場合は、黒っぽい服の方を右側に置きます。
二人の真ん中に、
御膳、菱台2個、御膳と飾りをつけます。
弓は左手、矢は右手に持たせます。
(矢の羽が下に来るように)
背中に背負う矢は、向かって右側の肩から矢羽が出るように飾り付ければOKです。
ちなみに、随身とは、貴族を外出時に警護する役割の人です。
普通、随身という警護役は、右大臣や左大臣のような非常に位の高い貴族がするような役割じゃありません。
しかし、雛人形では右大臣と左大臣が、その役を担っているようですね。
2人とも武官束帯をしているので、随身というよりも“近衛中将※”の方が立場的には正しいそうです。
※爺の方が近衛中将で、若者の方は近衛少将
《5段目》
左から:橘 仕丁(笑、怒、泣) 桜
一番左に橘、一番右に桜、
それらの真ん中に仕丁(してい)3人を飾ります。
左から、笑、怒、泣の順に置きます。
表情が分からないタイプの人形の場合は、置く側の手をあげているので、それを基準に左右を判断できます。
右手が上がってる方を左に置き、
左手が上がってる方を右に置きます。
残った1人は真ん中に置きます。
仕丁に持たせる道具は、
- 向かって左(笑顔)に台笠
- 真ん中(怒顔)に沓台(くつだい)
- 右側(泣顔)に立傘
を、それぞれ持たせます。
ちなみに、京式では、
左の笑顔に箒(ほうき)、
真ん中の怒顔に塵取り、
右の泣顔に熊手をそれぞれ持たせます。※
※持たせずに前に置くだけのケースもあります。
ちなみに、仕丁とは、貴族に仕える雑用係のことです。
だから、ヒエラルキー(階層)が一番下なので、雛人形の中では下の段に並べられるんですね。
(一応、道具や器具などの荷物よりは上の扱いだが…。)
《6段目》
左から:箪笥 挟箱 長持 鏡台 針箱 衣裳袋 火鉢 茶道具
食器やたんす、お化粧道具など、
屋内で使う生活用品を6段目に置きます。
《7段目》
左から:籠 重箱 御所車
7段目は、屋外で使うものや、重箱を置きます。
重箱も屋内で使うものですが、
ミニチュアの大きさ的に6段目の小物と合わず、7段目に置いた方が調和が取れてしっくりくるので7段目に置きます。
■雛人形の飾り方(5段)
《1段目~3段目》
7段雛の飾り方と同じです。
※《4段目》
左から:右大臣 重箱 御膳 菱台 左大臣
※《5段目》
左から:橘 仕丁3人(怒、泣、笑) 桜
※5段の場合は、4段目と5段目が店や商品によって異なるケースが数多く見受けられます。
■雛人形の飾り方(3段)
《1段目~2段目》
7段雛の飾り方と同じです。
《3段目》
左から:橘 籠 重箱 御所車 桜
橘と桜を左右の端に置いて、その間に籠、重箱、御所車を置きます。
こんなところですね。
基本的な雛人形の飾り方を書きましたが、雛人形を取り扱うお店によって違う場合があります。
また、人形師あるいは工房の意図によって、配置が変更されたり、物品が省略されたり追加されたりすることもあります。
そのため、
雛人形のセットを上記の解説と同じように飾ることができない
ことがあります。
そのあたりは、あらかじめご理解いただきますよう、よろしくお願い申し上げます。
【豆知識】京雛と関東雛の違い
意外と知られていないのが、雛人形には京雛と関東雛の2種類があること。
また、置き方や雛人形に持たせる道具にも、関東式(新式)と京式という、多少の違いが見受けられます。
現代の部屋の大きさにも、京間と江戸間の違いがあるように、雛人形の世界にも京と関東では違いがあるんです。
上記の飾り方のところでも書きましたが、関東式と京式の違いをまとめると以下のとおりになります。
- 殿と姫の置き方が左右逆
現代風(新式)では左殿・右姫。
古式および京式では右殿・左姫。
ちなみに、古式・京式では、
御所での玉座の位置を基準にしているので、
新式とは殿と姫の位置が逆になる。
- 三人官女(中央)が持つ物が違う
現代風(新式)では三方。
古式および京式では島台。
- 仕丁の持つ物が違う
現代風(新式)では、
向かって左(笑顔)に台笠、
真ん中(怒顔)に沓台(くつだい)、
右側(泣顔)に立傘。
ちなみに、古式および京式では、
左の笑顔に箒(ほうき)、
真ん中の怒顔に塵取り、
右の泣顔に熊手。
- 雛人形の顔立ちが違う
現代風(新式)では割と丸顔。
古式および京式では細面の京美人を基本。
こんなところですね。
置く位置に関しては一目瞭然ですが、雛人形の顔立ちで京雛か関東雛か見分けるのは、実際のところ、素人に見分けられるかどうか不明です。
恐らく、最近の雛人形の顔立ちは、京雛も関東雛も差がなくなってきているみたいです。
雛段と雛人形のセットをいくつも持っている家庭では、整理せずに、ごっちゃにしてしまい込んでいることもあります。
なので、京雛を関東風に飾ったりしているご家庭もあるようです。
そういう家庭では、
とりあえず、それっぽく飾ってあればいい。
って感じで飾るようですね。
でも、人形にしてみれば、たまったもんじゃありません。
特に、別の雛人形の殿と姫が一緒に飾られたら、そりゃあもう大変なコトですよ。(笑)
ちゃんとした、決まったパートナーと一緒に飾ってあげましょうね。
でもまさか、現代において京式や関東式という置き方の違いがあったり、逆に、式を無視して、ごっちゃにして飾られているとは、当時の平安貴族たちは、夢にも思わないでしょうね。(笑)
では、今回はこの辺で。
■関連項目