「秋の空が高い」
秋晴れになると、そんな言葉を聞くことがあると思います。
秋の空がどうして高いのか?
あなたは不思議に思ったことはありませんか?
今回は、その不思議をわかりやすく解説していきますね。
皆様の参考になれば幸いです。
■秋の空が高い理由
秋の空が高いと感じる理由は、ズバリ、
- 雲が高い所にある
- 日本の秋の空は空気が澄んでいる
- 実際に、わずかに空が高くなっている
の3つです。
それぞれについて、わかりやすく解説していきます♪
■理由1. 雲が高い所にある
秋の空にできる雲は、実は他の季節に比べて、高い位置にできることが多いのです。
秋の前の季節の夏にできる代表的な雲として、入道雲(積乱雲)やわた雲があります。
わた雲↓
入道雲↓
これらの雲ができる高さは、大体、地上から約2kmの間のところにできる雲です。
つまり、夏は雲が低いのです。
しかし、秋の空によくみられる雲、すじ雲やうろこ雲は、約5km~13kmという高い位置にできます。
すじ雲↓
うろこ雲↓
つまり、秋の空は高い位置に雲があるため、空が高く見えるというワケですね。
そう、雲が物理的に遠くにあるため、人間の目からは空が高く見えるのは当然のことなのです。
では、なぜ秋の雲が高い位置にできるのか?
気象予報士の饒村 曜(にょうむら よう)さんによると、
その理由は、
- 日本の秋の空気は乾燥している
- 夏と比べて秋は気温が低くなっている
の二つです。
秋になると、中国大陸から乾燥した移動性高気圧(大陸性高気圧)が日本にやってきます。
(春でもやってきます。)
この移動性高気圧は、大陸の上を長時間かけて移動してくるため、空気中の水分が失われており、空気が乾燥しているのだそうです。
また、夏と比べて秋は気温が低くなります。
地球の自転軸の傾きが変わるため、太陽の位置が物理的に遠ざかるからです。
そして、「空気が乾燥している」+「気温が低くなる」という2つの現象が重なると、雲は空の高い位置にできるようになります。
夏は、海からの水分を含んだ太平洋高気圧の影響で空気中の水分量が多く、しかも気温が高いため、空気中の水分が集まって雲になるまでの時間が短く、比較的低い位置で雲が大量発生します。
一方、秋では、乾燥した移動性高気圧の影響で空気中の水分量が少なく、しかも気温が低いため、空気中の水分が集まって雲になるまでの時間が長くなり、その分、高い位置で雲ができるようになるのです。
また、空気中の水分が少ないので、秋の空の雲はすじ雲やうろこ雲といった、比較的薄い感じの雲が多いのです。
逆に、夏の雲が、わた雲や入道雲といった、厚めで大きい雲が多いのは、空気中の水分が多く、短い時間で大量に雲になるので、秋と比べて空の雲の量が圧倒的に多いからなのです。
以上、こんなところですね。
さて、秋の空が高い理由のひとつ「雲が高い位置にある」ことを解説しました。
次の項目で、2つ目の理由を確認しましょう。(笑)
■理由2. 秋の空は空気が澄んでいる
実際、日本の秋の空は、他の季節の空と比べて空気が澄んでいることが多いです。
空気が澄んでいるということは、空気の透明度が高いということ。
透明度が高ければ、遠くの方まで光が届くため、青空がいつもよりも遠く高く感じられるのです。
「秋の空が、どこまでも高く見える。」
などという言葉は、透明度が高い澄んだ空から生まれた、日本独特の表現なのです。
叙情的ですよね。(笑)
日本の秋の空が高いのは、秋の空が透明度が高くて澄んでいるからだとわかりましたね。
では、なぜ澄んでいるのか?
これには、大きく分けると、
- 移動性高気圧
- 上昇気流が少ない
- 草木の影響
など、3つの理由があります。
◆移動性高気圧
これについては「1.秋の雲は高い所にある」でも少し触れましたが、
日本の秋の空は、中国大陸からやってくる移動性高気圧(大陸性高気圧)によって、秋晴れとなります。(春もそうです)
大陸からやってくる高気圧は乾燥していて、空気中の水分が少ないのです。
空気中の水分は、光の色の成分の青色を吸収してしまう性質があります。
故に、空気中の水分量が少ない秋では、光の青色が吸収されにくいため、光の青色の成分が空気中に広く散らばることになります。
故に、秋の空は澄んだ青空になるのです。
また、空気中の水分が少ないということは、その分、光の屈折減少が起きにくくなるため、光が通りやすくなります。
例を挙げると、透明度が高い澄んだ湖や川で、深い底の方まで見ることができるのは、不純物が極端に少なく、光が通りやすくなっているからです。
それと同じ理屈で、不純物(塵や水分など)が少ない空気は、光が通りやすく、遠くの方まで見えるということです。
◆上昇気流が少ない
実は、日本の秋の気候では、上昇気流が少ないのです。
理由は、前述の移動性高気圧にあります。
高気圧では、基本的に上から下へ風が吹き、気圧の低い方へ流れていきます。
逆に、低気圧の場合は、下から上へ空気が上昇していきます。
つまり、秋は移動性高気圧の影響で、低気圧による上昇気流が少ないので、土やホコリが舞い上がりにくいのです。
その分、他の季節よりも空気が澄んでいることになります。
逆に、春や夏は、秋よりも日差しが強く、気温が高くなるので、上昇気流が発生しやすくなります。
日差しが強いと空気が熱せられ、熱せられた空気は、軽くなって上昇気流を作り出します。
よって、秋よりも日差しが強い春や夏は、上昇気流が多いのです。
その分、土やホコリが舞い上がり、空気の透明度を低くしてしまうのです。
◆草木の影響
秋では、夏に生い茂った草木の影響で、土やホコリが舞い上がりにくくなっています。
草の根や木々の葉っぱなどによって、物理的に土やホコリが舞い上がるのが遮られ、その分だけ空気がよどみにくくなっているのです。
まとめると、
- 大陸性高気圧で空気中の水分が少ない
- 上昇気流が少なく、土やホコリが舞い上がりにくい
- 草木の影響で、土やホコリが舞い上がりにくい。
以上、3つの理由で、日本の秋の空は澄んでいるというワケですね。
なるほど、納得です♪
■理由3. 実際に、わずかに空が高くなっている
実は、秋の空は、わずかですが空が実際に高くなっているそうです。
理由は「対流圏が高くなる」からだそうです。
対流圏とは、地球を覆っている大気圏の4つの層のうち、一番内側にある層のことです。
全ての天候現象は、この対流圏内で起こります。
夏の暑さで発生した上昇気流は、対流圏をゆっくりと上に押し上げ続けます。
約5kmくらいゆっくりと対流圏が高くなるそうです。
故に、秋になると対流圏そのものが上に厚く高くなっているというワケです。
澄んだ秋の空が高く見えるのは、「本当に空がちょっぴり高くなっている」という理由もあるのです。
まあ、5km程度高くなっても、目に見えるワケではないそうですが…。(苦笑)
◆大気圏について
大気圏の4層構造
- 対流圏
高さ10~約16kmまでの大気の層で、大気圏の1番内側にある。
全ての天候現象は対流圏内で起きる。 - 成層圏
対流圏の1つ上にある層で、16~約50kmの部分にある。
天候が全く発生しない領域なので、常に晴れている。 - 中間圏
成層圏の1つ上にある層で、50から約90kmの高さにある。
気温が非常に低く、50kmでは0℃程度だが、90kmの高さでは-80℃にも達する。 - 熱圏
大気圏の最も外側にある層で、90~600km程度の高さにある。
高さ100kmはカーマン・ラインと呼ばれ、それ以上は空気が薄すぎるため宇宙空間と認識される。
中間圏約90kmでは気温が-80℃と非常に低かったが、
熱圏に達すると、太陽からの短波長の電磁波や磁気圏などの影響で窒素や酸素は解離して原子状になり、結果として気温が異常に高くなる。故に熱圏と呼ばれる。
場所によっては2000℃近い高温になることもあるが、
そもそも熱圏では、分子の密度が地表と比べてきわめて低いため、実際にそこに行っても大気から受ける熱量は小さく熱さは感じられないらしい。
■なぜ他の季節の空は高くないの?
日本の秋の空が、
- 水分の少ない移動性高気圧
- 上昇気流が少ない
- 草木の影響
などの理由によって空気が澄み、空が高く見えることはわかりました。
じゃあ、なぜ他の季節の空は高くないの?
と疑問に思う人もいると思います。
それには、各季節ごとに理由があります。
◆夏は太平洋高気圧の影響を受ける
夏の太平洋高気圧が何故水分が多いかというと、海の上で発生した高気圧だからです。
日本では、夏は、主に海上で発生した太平洋高気圧によって晴れになります。
そのため、大陸で発生した秋の高気圧よりも水分が多いのは当然のこと。
よって、光の屈折率が高まるので、秋の空ほど高いところまで空気が澄まず、また雲が低い位置に大量に出来るようになるため、空を高く感じないのです。
◆春は移動性高気圧と太平洋高気圧の両方の影響を受ける
春は、秋と同様に大陸からの移動性高気圧の影響を受けますが、同時に太平洋高気圧もある程度発達してきているので、水分の多い太平洋高気圧の影響を受けやすくなります。
その理由で、雲が比較的出来やすく、低気圧による上昇気流も発生しやすいので、土やホコリなどが空気中へ舞い上がり、空気の透明度を下げてしまいます。
◆冬はシベリア高気圧の影響で豪雪→冬晴れ
冬は、シベリア高気圧が日本にやってきます。
日本海の水蒸気を吸ったシベリア高気圧は、日本海側の地域に大雪をもたらし、太平洋側の地域に流れてくるころには乾燥しきった高気圧となって冬晴れの青空を見せてくれます。
しかし、水分がほとんどない状態でやってくるので、雲ができません。
ゆえに比較する対象が無く、秋ほど空を高く感じないのです。
以上、こんなところですね。
秋の空が高い理由がよくわかりましたね。
私自身も勉強になりました。
しかしながら、不純物の影響で空気がいつも淀んでいる都市部で、どこまでも「青く高い、秋の空」を見ることができるのは、台風一過の後くらいなものでしょうね。
こういう時、元々空気が澄んでいる場所なら、より高く澄んでいて美しい青空を見ることができるんでしょうね。
羨ましい限りです。
では、今回はこの辺で。
■関連項目