草むらに入って遊んだりしてたら、いつのまにか服にひっついてる、あのトゲトゲのやつ。
これですね↓
通称“ひっつき虫”って言うんですけど、
「これってなんだろ?」
って思ったことありませんか?
実はこれの正式名称は、
オオオナモミ(またはオナモミ)
という植物の実です。
漢字で書くと、オオオナモミは“大葈耳”、オナモミは“葈耳”です。
子供の頃、外で遊んで帰ってきたら、いつの間にか服にひっついていて、手に取って、投げたりして遊んだものです。(笑)
懐かしいと思われる方も、結構いるんじゃないでしょうか?
今回は、そんな懐かしい(?)オオオナモミについてチェックしてみました。
皆様の参考になれば幸いです。
■ひっつき虫が出る季節は?
秋から冬にかけて、オオオナモミ(オナモミ)が実をつけるので、その頃になります。
具体的には、大体11月~12月初旬頃になります。
紅葉の時期とも重なりますので、家族で秋の行楽などに出かけて自然に触れると、子供たちの服についてくることがあります。
■チクチクしたトゲは何のため?
触ったらチョット痛い、チクチクしたトゲ。
このトゲの先には釣り針みたいな“反し(かえし)”がついています。
だから、服にひっついてくるんですね。(笑)
ではなぜ、
トゲに反しがついているのか?
その答えは、ズバリ、
- 繁殖拡大するため
です。
実は、このとげとげの実の中には、種が入っています。
それが人間の服や動物の毛などに引っかかって移動するのです。
で、移動している間に、トゲトゲの実が落下したり割れたりして、種が別の場所に落ちます。
その場所で、またオオオナモミが成長して、さらに繁殖していくワケですね。
つまり、オオオナモミは、繁殖拡大に関しては他力本願な植物なのです。(笑)
まあ、人間の服に引っかかった場合は、すぐに取られてゴミとして捨てられてしまうのがオチ。
でも、捨てた場所に土があったりすると、そこから目が出てオオオナモミが育つこともあります。
そして、秋ごろにはトゲトゲの実をつけるというワケですね。
まあ、なんというか・・・
移動手段は極めて他力本願ですが、その方法で日本各地に分布しているので、繁殖力は極めて高い植物と言えます。
■オオオナモミは外来種
驚いたことに、
このオオオナモミは実は外来種!
原産地は北アメリカとされているので、アメリカからはるばるやってきたことになります。
旅行者が持ち込んだのか、貿易船の荷物にひっついてきたのか、そのあたりは判りませんが・・・
一番最初にオオオナモミが確認されたのは、1929年の岡山県。
85年以上も前から日本にいるワケです。
意外と昔から日本に来ていたんですね。
北アメリカという寒い気候の土地が原産地なら、日本の北海道でもオオオナモミが分布しているのも不思議じゃありませんね。
もちろん、日本だけじゃありません。
ヨーロッパやオーストラリアはおろか、アジア全般、南米にまでも分布しているというのですから、恐るべき繁殖力です。
他の植物の繁殖力が大きい、アフリカ大陸では見られないようですが、繁殖力が高いのは確か。
他の土地の植物の成長を妨げる可能性があるので、日本では要注意外来生物に指定されています。
植物も生物扱いなんですね。
更には、日本の侵略的外来種ワースト100にも指定されています。
繁殖力が強すぎる生物が入って来ると、その土地の生態系を壊すことがありますが、植物でも、それが起こってしまうんですね。
■オナモミは絶滅危惧種
記事の冒頭で少しだけ触れましたが、オオオナモミの他に、オナモミという同じ種類の植物もあります。
オナモミは日本古来の種で、絶滅危惧II類(VU)に指定されています。
その理由は、オオオナモミを含めた外来種の植物に圧されて、繁殖できる場所がなくなっているからです。
オナモミの見た目は、オオオナモミとよく似ていてほとんど変わりません。
(実が少し小さい)
なので、オオオナモミと間違われて、絶滅危惧種のオナモミとは気付かない人がほとんどでしょうね。
現実的に、現在の日本の山林や草むらで見られるオナモミ属のほとんどは、
- オオオナモミ
- トゲオナモミ
- イガオナモミ
のどれかです。
人知れず、ひっつき虫の一種が、絶滅の危機に追いやられているとは思いもよりませんでした。
まあ、オオオナモミは人為的に日本にばら撒かれたワケではないので、オオオナモミ自体が悪いんじゃないのですが・・・。
オナモミは、人知れずひっそりと消えていく、ある意味可哀相な植物なんですね。
もしも、草むらなどでひっつき虫を見かけることがあったら・・・
ひょっとしたら、それは絶滅寸前のオナモミかもしれませんよ?
では、今回はこの辺で。