スーツの上着やジャケット、コートなどのアウター(上着)を買うと、ポケットの中に服と同じ生地の布切れが、ボタンなどと一緒にビニール袋に入ってついてきますよね?
この布切れって、なんなのか気になりませんか?
実はこの布切れは、
「共生地(ともきじ)」
と言います。
服についてくる共生地は、服に少し穴が空いたり、少し破れたりした時などに、服を補修するための生地なんです。
タバコの火の不始末や虫食いなどで、意図せず小さな穴が服に空いてしまうことがあります。
そういう時、この共生地を使って穴を修復するのです。
共生地を使って服の穴を修復することを
「かけつぎ」
と言います。
ただし、かけつぎは、プロの職人技じゃないと、キレイに修復できません。
素人がやっても、必ずどこかに修復の痕跡が残ってしまうものです。
修復の痕跡を残さず、かきつぎでキレイに修復できるのは、服職人さんだけなのです。
■どうして共生地がついてくるの?
買った服に共生地がついてくる理由は、以下のとおりです。
昔の背広やスーツなどの上着は高価だったので、現代のように簡単に買い直すことは難しかった。
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なので、服に少し穴が空いた程度なら、買い直さず、服職人に頼んでキレイに修復してもらうことが普通だった。
(服を買い直すよりも、修復してもらった方が遥かに安かった。)
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共生地は、服職人に直してもらう時のために、サービスで服についてくる布切れだった。
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そのサービスが慣習となり、そのまま現代にまでなごりとして受け継がれている。
以上、こんなところですね。
昔は、上着を修復するときは、服職人に頼んで、共生地を使ってキレイに修復してもらっていたのです。
現代では、割と安く服を買うことができます。
ブランド品のような非常に高価な服は別として、服を買い直すことは、それ程難しいことではありません。
時代を経て、安価な服が一般的に浸透し、大量に出回るようになりました。
そのため、穴が空いたりした場合でも、修復しないで別の服を着ることが多くなり、服職人に頼んで修復してもらうこと自体が少なくなっていったのです。
やがて、服職人の存在は多くの人から忘れられ、“共生地を付ける”というサービスだけが残って現代でも続いているというワケですね。
現代では、共生地よりも、ボタンの方がよく使われていると思います。
どこかに引っ掛けたりして、いつの間にかボタンが無くなっていたりした時、共生地と一緒についてくるボタンを使って代用することの方が多いですよね。
ボタンを付けるのは比較的簡単で、服職人のかけつぎのような高度な技術はいりません。
家庭で出来てしまう程度のものです。
そういう意味でも、共生地とボタンのセットは、現代でも重宝がられています。
NHKの某番組でも紹介されていましたが、服職人の“かけつぎ”の技量は非常に繊細で、スーツの袖に空いた穴を、見事なまでにキレイに修復していました。
見ただけではわからない程の出来栄えでした。
こうした優れた服職人の技術が無くならないことを祈るのみですね。
では、今回はこの辺で。