インフルエンザは危険な病気ですが、インフルエンザが悪化すると、恐ろしい病魔に襲われることがあります。
その恐るべき病魔の名はインフルエンザ脳症。
主に、1歳~5歳くらいの乳幼児がインフルエンザにかかると、インフルエンザ脳症を発症する可能性があります。
稀に大人も発症することがあります。
今回は、そんな恐ろしい病気のインフルエンザ脳症についてまとめてみました。
出来る限りわかりやすく書いたつもりです。
皆さんのお役に立てたら幸いです。
■インフルエンザ脳症とは?
インフルエンザ脳症を一言で言うと、
脳内の免疫システムの過剰反応で
脳がやられてしまうこと
です。
発症のメカニズムをざっくり書くと、インフルエンザウイルスの影響で免疫システムがうまく働かなくなり、体内のあちこちで免疫が過剰に反応するようになります。
つまり、ウイルスが無いところでも免疫システムが過剰に反応するのです。
脳内にインフルエンザウイルスがいなくても、その過剰反応が脳内で起こってしまい、脳細胞がダメージを受けて、インフルエンザ脳症を発症してしまうのです。
いつ重症化するかは、
医者にも予測できないそうなので、
とにかく最優先で病院に連れていってください!
■インフルエンザ脳症の原因
序盤でざっくりと書きましたが、インフルエンザ脳症の原因は脳内の免疫システムの過剰反応です。
原因のメカニズムについて明らかになっていることは、
- サイトカイン
という免疫物質がカギとなっていることです。
サイトカインは、免疫を調節し、体内に侵入した病原体を排除する物質で、免疫システムの要(かなめ)とも言える物質です。
また、サイトカインは数多くの種類が存在し、それぞれが綿密に連携しあって作用しています。
それを専門用語でいうと、サイトカインネットワークと呼ぶそうです。
そのサイトカインネットワークが正常に働くことで、私たちの身体の免疫システムが正常に保たれているのです。
しかし、インフルエンザウイルスはその強い毒性で、サイトカインネットワークを攻撃します。
“邪魔する”といった表現の方が正しいでしょうか。
それによって、サイトカインネットワークが傷つくので、免疫システムがうまく働かなくなり、過剰な免疫反応が出てしまいます。
その過剰な免疫反応が、インフルエンザウイルスがいない脳内で出てしまうことがあります。
それこそまさしく、インフルエンザ脳症の原因なのです!
■インフルエンザ脳症の主な症状
インフルエンザ脳症の症状は急に発症すると言われています。
インフルエンザ脳症の主な症状は以下の3つです。
・痙攣(けいれん)
全身が震えている感じです。
ブルブルというより、ガタガタといった硬い感じの震えです。
1分くらいですぐに止まることもあれば、15分近くも続くことがあります。
また、間隔の短い震えが起こったり止まったりと、断続的に続く場合もあります。
・意識障害
インフルエンザ脳症の顕著な例です。
文字通り意識がほとんどなく、揺さぶったりツネったりしてもほとんど反応がありません。
あるいは、刺激を与えれば一瞬目を覚ますがすぐに意識を失ってしまうという状態や、意識が朦朧としていて、起きているのかいないのかよくわからない状態になることもあります。
・異常行動
その人の日常生活ではありえない言動をします。
例としては以下のような感じ。
- 幻覚を見る
(壁に漫画やアニメの絵が見える) - 意味が分からないことを話す
(または、ろれつが回らない) - 急に怖がったり怒ったり
泣き出したり笑ったりする - 食べ物とモノの区別がつかない
- 誰もいないところに
“人がいる”という
熱でおかしな言動をすることは普通にありえます。
しかし、インフルエンザ脳症の場合は、その持続時間が長いのです。
とにかく、以上のような症状が出ていたら、
すぐに病院へ連れて行ってください!
■後遺症と死亡率
インフルエンザ脳症にかかり、症状がかなり進行してしまうと、後遺症が残ってしまうことがあります。
主な後遺症は以下のとおりです。
(下へ行くほど重症)
- 嚥下障害(飲み込みにくくなる)
- 癲癇(てんかん)
- 知能低下
- 四肢(手足)の麻痺
- 歩行困難
- 寝たきり状態
など。
脳がやられてしまうので、主に知能と運動神経系に障害が出る神経後遺症が残るようです。
しかしながら、全く後遺症が残らずに元気になる子供もいれば、嚥下障害などの軽い後遺症が残る程度で済む子供もいますし、日常生活に大きな支障が出る重度の後遺症が残る子供もいます。
後遺症についてはケースバイケースでしょうね。
悲しいことですが、厚生労働省によるインフルエンザ脳症ガイドラインが普及した今でも、インフルエンザ脳症で亡くなられてしまう子供がいるそうです。
確率的には、
- 後遺症が残らない子供
約70%前後
- 後遺症が残る子供
約25%前後
- 亡くなられる子供
約8%前後
だそうです。
亡くなってしまうケースの場合は、多臓器不全まで引き起こしているという極めて重症な状態にまで陥っていることがほとんどだとか。
2000年くらいでは、死亡率が約三割と高かったのですが、現在では10%未満にまで抑えられています。
これについては、インフルエンザ脳症ガイドラインの普及が功を奏したと言えるでしょうね。
厚生労働省の見事な対応に感謝するべきですね。
■予防・治療方法など
まず、子供がインフルエンザにかかったら、
インフルエンザ脳症を発症する前に
すぐに病院で診てもらうのが一番の予防法ですね。
インフルエンザ脳症をもたらすのは免疫システムの過剰反応が原因ですが、大元の根本原因はインフルエンザウイルス。
なので、インフルエンザの治療さえすれば、インフルエンザ脳症を予防できます。
次に治療法。
インフルエンザ脳症の治療法は、大きく分けると2種類あります。
一つは、支持療法。
全身の状態を良好に保つための治療を行います。
いわゆる“対症療法”です。
もう一つは、特異的治療。
脳症の根本原因である、インフルエンザウイルスを退治するための特殊な治療法です。
病院では、これら2種類の治療法を同時に行っていきます。
つまり、一般家庭では不可能。
病院じゃないとできない治療です。
特異的治療については、
- 抗ウイルス薬投与
- ステロイド投与
などが行われるそうです。
ここで言う抗ウイルス薬とは、インフルエンザウイルスの型※によって異なります。
(※ABCの3つの型がある 詳細はこちら)
ただし、子供にはタミフルは使えないので、A型のウイルスの場合は主にアマンタジンを使用するそうです。
次にステロイド投与ですが、これはステロイドパルス療法という非常に特殊な療法で、通常の10倍の量のステロイドを3日間投与するというもの。
しかも、副作用がほとんどないので非常に有効なんだとか。
素人の私には、なぜ有効なのかわかりませんが、ステロイド剤を投与することによって過剰な免疫反応を鎮めることができると聞いたことがあります。
その説が正しいなら、ステロイドパルス療法によって、免疫の過剰反応であるインフルエンザ脳症を抑えることも可能ということになります。
そう考えると期待できそうですね。
それともう一つ、有効な治療法があるそうです。
それは、抗体を作り出すためのガンマグロブリン投与だそうですが、ガンマグロブリンは保険が利かない
非常に高価な免疫製剤なので、一般市民には非現実的な治療法です。
■本当にタミフルは効くのか?
病院ではインフルエンザ脳症の患者に、ワクチンやタミフルを投与するというケースがあります。
しかし実際問題として、インフルエンザ脳症には
「ワクチンやタミフルが効くのか?」
という疑問がわきますよね。
確かに、ワクチンやタミフルは、インフルエンザウイルスに対抗するための手段です。
それらの効果によって、
「インフルエンザウイルスが減ることになり、結果的にインフルエンザ脳症の発症を防ぐという予防にはなる」
と思います。
でも、既に発症してしまった場合、
「インフルエンザ脳症をワクチンやタミフルで抑えられるかどうかは、ちょっと疑問視されている」
のが現状。
現在、厚生労働省が検証を進めています。
■まとめ
- インフルエンザ脳症は
免疫システムの過剰反応
- 主に1歳~5歳の乳幼児が発症
(稀に大人でも発症する)
- 主な症状は
痙攣・意識障害・異常行動
- 発症者の7割弱は後遺症なしで治る
- 死亡率は約8%前後
- 約25%前後の確率で後遺症が残る
- “インフルエンザにかからないこと”
が最高の予防法!
- 高熱が出たらすぐに病院に行け!
以上、こんなところですね。
インフルエンザ脳症は、お子様の将来を奪いかねない危険な病気です。
高熱が出たら、すぐに病院へ連れていきましょう!
処置が早ければ早いほど、インフルエンザ脳症にならなくてすむ可能性は高まりますから。
それに、診断の結果がインフルエンザじゃなかったとしても、子供の熱が下がって元気になれば、それに越したことはないのですから。
では、今回はこの辺で。
■関連項目