先天性二尖弁は、
心臓の大動脈の中にある弁(べん)が
生まれつき2枚しかない血管内の異常
です。
普通、心臓の大動脈内にある弁は、下の図のように、通常は3枚あります。
しかし、先天性二尖弁の人は、この弁が2枚しかないのです。
弁が2枚しかないからといって、日常生活に必ず支障をきたすワケではありません。
普通に生涯を終える人がほとんどです。
しかしながら、先天性二尖弁の人は、中年以降になると、正常の人と比べて様々な心臓の疾患が出やすくなる可能性もあるのです。
今回は、先天性二尖弁について、起こる症状や治療方法などを調べ、わかりやすくまとめてみました。
皆様の参考になれば幸いです。
■先天性二尖弁で起こる主な症状
先天性二尖弁が原因で起こる主な症状は以下の二つです。
- 大動脈弁狭窄症
(弁が空く隙間が狭くなり血液の通りが悪くなる) - 大動脈弁閉鎖不全症
(弁が正しく閉じにくくなり、血液が心臓に逆流する)
これらの症状が原因で、心臓に大きな負担がかかるようになります。
大動脈がある心臓の左心室側が、無理をしてでも血流を調整しようとするからです。
そうなってくると、
- 息切れ
(ほんの少しの運動で起こる) - 激しい動悸
(大して動いていないのに心臓がバクバクする)
などの症状が現れ始めます。
そして、そのまま治療を施さずにいると、次第に心臓の左心室の壁が発達して分厚くなり、本来の心臓の形が変形してきます。
そうなってくると、以下のような症状が発生します。
下へ行くほど重症です。
- 胸の痛み
(苦痛を伴う、胸の中の痛み) - 心不全
(苦しくて、まともに行動できなくなる) - 心臓発作
(心臓がまともに動かなくなり、意識を失う) - 突然死
(心臓の停止)
こんなところですね。
先天性二尖弁の人で、大動脈弁狭窄症や大動脈弁閉鎖不全症が起きている人は、場合によっては死に至る可能性もあるということです。
怖いですね。
激しい胸の動悸や息切れが度々起きる人は、心臓の弁がおかしくなっている可能性がありますので、すぐに心臓の外科医に診てもらいましょう。
■大動脈弁が二尖弁かどうか調べる方法
大動脈弁が二尖弁かどうかを調べる方法があります。
その方法は、心臓超音波検査です。
いわゆる、心エコーですね。
循環器用の超音波画像診断装置と呼ばれる医療用の専門機器を使用して検査します。
診断には医学的な専門的知識が必要なのでここでは割愛しますが、検査自体はとても簡単です。
時間もそれ程かかりません。
当たり前の話ですが、二尖弁かどうか確認するために、わざわざ手術するようなことはありません。
ご安心を(笑)
■患者の寿命
先天性二尖弁の人の寿命は様々です。
大動脈弁狭窄症や大動脈弁閉鎖不全症が発症している人は、エスカレートすれば死亡する可能性が高まります。
しかしながら、外科手術(人工弁を付ける等)を施すことで治療することも可能です。
逆に、全く症状が出ない(またはすごく軽い症状)人は、心臓に極端な負担を掛けない限り、普通の人と変わらずに生涯をまっとうできます。
中には、死ぬまで先天性二尖弁だと気付かず、無事に生涯を終える幸運な人もいるでしょう。
ちなみに、先天性二尖弁の人の割合は全体の約2%。
単純に計算すると、100人調べたら2人は先天性二尖弁の人がいるということになります。
決して珍しいものではないのです。
■先天性二尖弁の治療方法
先天性二尖弁を治療する方法は、症状の重さによって異なります。
◆症状が軽い場合
- 薬の摂取制限(内蔵への負担軽減)
- 塩分制限(動脈硬化の悪化防止)
- 運動制限(心臓への負担軽減)
◆症状が重いまたは危険性が高い場合
大動脈弁狭窄症や大動脈弁閉鎖不全症を発症し、
胸の痛みや心不全が起こっている場合。
- 外科手術を施す
弁の形成手術(弁を治す)
弁の置き換え手術(弁を人工弁に取り換える)
以上、こんなところですね。
症状が軽い場合は、生活習慣上で注意していればなんとかなりますね。
しかし、手術が必要な場合は、かなり大変ですね。
手術で弁を治せれば問題ないのですが、人工弁に変えるとなると、生涯、自分の身体に負担が生じることになります。
人工弁も色々と開発されていますが、大きく分けると、金属弁と生体弁の二種類に分類できます。
金属弁は100年以上の優れた耐久性がありますが、血栓を防ぐための薬(ワーファリン)を定期的に飲まないといけません。
逆に、生体弁の場合は、ワーファリンを飲む必要がありませんが、弁の耐久性が低く、10年~20年程度で手術して弁を交換しないといけません。
また手術する負担を考えると、金属弁の方がはるかに良さそうですね。
定期的にワーファリンを飲むだけで済みますから。
■先天性二尖弁は遺伝する?
先天性二尖弁は自分の子供に遺伝するかどうか、気になるところですよね?
遺伝するかどうかは、ズバリ、確率の問題です。
親が先天性二尖弁の場合、その子供に遺伝する確率は約9%前後です。
遺伝しない人の方が多いのです。
逆に言えば、先天性二尖弁じゃない親から、先天性二尖弁の子供が生まれることもあります。
もちろん、その確率は更に低く、1~2%前後ですが。
それに、先天性二尖弁だったとしても、普通に健康に生活できる人の方が多いのです。
なので、気にする必要はありません。
ご安心を。
■まとめ
- 先天性二尖弁は生まれつき
大動脈弁が2枚しかない血管の異常
(普通は弁が3枚ある)
- 二尖弁かどうかは心臓超音波検査
(心エコー)で検査できる
- 先天性二尖弁であっても
大半の人は問題なく生きられる
- 稀に大動脈弁狭窄症や
大動脈弁閉鎖不全症を引き起こし
重症化すると死に至ることもある
- 重症化した時の症状は以下のとおり
・胸の痛み
・心不全
・心臓発作
・突然死(心停止)
- 先天性二尖弁は遺伝するが
確率は低い
(先天性二尖弁の親から子への遺伝確率は約9%前後)
(普通の親から先天性二尖弁の子ができる確率は2%前後)
- 症状が軽い場合は
生活習慣上で注意して行動すれば大丈夫
(薬や塩分の摂取制限、運動制限などを行う)
- 症状が重い人(重症化した人)は
外科手術が必要
- 手術する場合は弁を治すか
人工弁に交換するかのどちらかになる
以上
■【番外編】先天性二尖弁の芸能人・著名人など
- 武田鉄矢さん (歌手 タレント)
- 井上裕介さん (お笑いコンビNON STYLE)
- アーノルド・シュワルツェネッガーさん (映画俳優)
こんなところですね。
武田さんや井上さんはニュースで話題になりましたが、過去にアーノルド・シュワルツェネッガーさんも先天性の二尖弁だったんですね。
ターミネーターのイメージが強い人だったので、心臓の病になったことがあったのは意外でした。
では、今回はこの辺で。