インフルエンザに対抗する薬の名前
のこと。
アビガンは、インフルエンザ薬としての商品名※であり、薬剤としての正式名称は「ファビピラビル」(英:Favipiravir)である。
(※医療機関専用の商品で、一般的な薬局等では販売されていない。)
近年、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に効果があるとして、アビガンが注目されるようになった。
過去には、エボラ出血熱を発症するエボラウイルスにも効果があるとして、使用された例がある。
・なぜアビガンが効くのか?
アビガンが新型コロナウイルス感染症に効く理由は、
「ウイルスの遺伝子RNAの複製そのものを阻害する」
からである。
(阻害のメカニズムに関しては、Wikipediaをご参照ください。)
つまり、アビガンの投与によって、体内の新型コロナウイルスが増えなくなるので、身体の免疫力や対症療法と組み合わせることで、新型コロナウイルスが減少し、症状が改善するのである。
また、患者の体内に抗体も作られるので、アビガンの投与によって症状が改善した患者の陰性化は、未投与者よりも早いと見られている。
・アビガンの禁忌
インフルエンザや新型コロナウイルスに効果が高いとされるアビガンには、実は投与が禁忌とされる対象がある。
- 妊婦又は妊娠している可能性のある女性
- アビガンの成分に対し過敏症の既往歴のある患者
妊婦(または妊娠している可能性がある女性)を禁忌の対象としている理由は、動物実験において、初期胚の致死(受精卵の死亡)※及び胎児の催奇形性※が確認されているからである。
(※あくまでも動物への実験結果だが、とても危険な実験結果が出ているため、禁忌とされた。)
ただし、授乳中の女性に対する投与は、授乳を止めることを条件に、限定的に使用が認められる可能性がある。
アビガンの主代謝物である水酸化体が、ヒト母乳中へ移行することが確認されているため、本来は授乳中の女性への投与は、乳児にとって危険である。
しかし、乳児への授乳を中止することで、アビガンの乳児への影響を回避できるため、投与が可能となる場合がある。
もうひとつは、薬の成分に対する過敏症がある人である。
投与するとショック状態などの重篤な副作用が起きる可能性があるため、禁忌としている。
・アビガンの副作用
国内臨床試験及び国際共同第III相試験※(承認用法及び用量より低用量で実施された試験)では、
- 血中尿酸増加:24例(4.79%)
- 下痢:24例(4.79%)
- 好中球数減少:9例(1.80%)
- AST(GOT)増加:9例(1.80%)
- ALT(GPT)増加:8例(1.60%)
などの副作用が報告されている。
(※安全性評価対象症例501例中、副作用が100例(19.96%)に副作用が認められた。(臨床検査値異常を含む)。)
参照:医療用薬品アビガン
・アビガン使用承認までの経緯
元々ファビピラビルは、変異を繰り返すインフルエンザウイルスに対抗するために開発※された薬剤である。
(※開発は富山大学医学部教授(当時)の白木公康氏と富山化学工業(当時)による共同開発で行われた。)
開発コードはT-705。
2014年3月に、当時の富山化学工業(現 富士フィルム富山化学)が製造販売承認を取得した。
ファビピラビルの効果は、インフルエンザ治療薬のタミフルよりも高いとされた。
そして、2017年3月9日、新型インフルエンザウイルスの流行に備えるために、当時の厚生労働省との契約および指示により、アビガンは開発元の富士フイルム富山化学に備蓄※されていた。
(※出庫には厚生労働省の許可が必要。契約により、最大で200万人分までの備蓄が可能。)
2019年末期から2020年にかけて世界的に蔓延した、新型コロナウイルスによる感染症(COVID-19)に効果があるとして、世界で注目されるようになった。
それをうけ、日本でも、厚生労働省の指示によってアビガンの出庫が一部許可され、治験として、日本国内の一部の新型コロナウイルス感染者に投与した結果、回復の兆候が見られた。
具体的には、軽症患者の場合は9割、重症患者の場合は6割に回復の兆候が見られたという。
また、その間、大きな副作用が見られることもなかった。
そのため、当時の日本国政府は、COVID-19の治療に関してはアビガンの投与を推奨とし、増産を決定した。
しかしながら、アビガンの使用と出庫の承認には、複雑な手続きが必要なことがネックとなっている。
具体的には、
都道府県知事が指定する医療機関(特定および第一種感染症指定医療機関)が供給依頼。
↓
厚生労働省が認可。
↓
厚生労働省が富士フイルム富山化学に出庫指示。
↓
指定医療機関へ搬送。
↓
指定医療機関に搬入。
↓
患者への使用。
以上のようなプロセスを踏むため、患者への投与までに時間がかなりかかってしまう。
地元の医師の判断で使用が可能になるよう、規制緩和をすることが課題である。
関連項目