風邪や肺炎の原因になるウイルス
のこと。
画像はイメージです。
本来のコロナウイルスは、人間や動物(家畜も含む)などに広く感染するウイルスで、人間に感染しても、風邪程度の症状しか出ないのが一般的。
しかし、人に感染するコロナウイルスの中には、SARSコロナウイルス(重症急性呼吸器症候群コロナウイルス)やMERSコロナウイルス(中東呼吸器症候群コロナウイルス)といった、肺炎などの重大な呼吸器疾患を引き起こす、非常に強力な力を持ったウイルスもある。
2019年末期ごろから2020年初期にかけて、中国湖北省武漢市で新型コロナウイルス(2019-nCoV)による肺炎患者が発見され、その後、次々と世界各地で患者が現れた。
それをうけ、中国政府はもちろんのこと、日本の政府やマスコミがこぞって注意を呼び掛けたため、当時の検索エンジンのキーワードランキングで、「コロナウイルス」が上位に食い込んだことがあった。
・人に感染するコロナウイルス
風邪コロナウイルス
一般的に、私たち人間がひく風邪の原因は、風邪コロナウイルスにある。
風邪コロナウイルスは以下の4種類。
- HCoV-229E
- HCoV-OC43
- HCoV-NL63
- HCoV-HKU1
これらのうち、いずれかのウイルスに感染すると、風邪の症状が出ることがある。
複数の風邪コロナウイルスに感染すると、重症化することもある。
余談だが、コロナウイルスは、遺伝学的には、α β γ δ の4つのグループに分類されている。
上記の4種類のうち、HCoV-229EとHCoV-NL63は、αコロナウイルスに分類され、HCoV-OC43、HCoV-HKU1はβコロナウイルスに分類される。
SARSコロナウイルス
いわゆる、SARS-CoV(重症急性呼吸器症候群コロナウイルス)で、2002年頃に中国の広東省で発生し、2003年の7月頃まで世界中に感染が拡大して猛威をふるった。
猛威をふるったものの、SARS-CoVに感染して死亡した人の多くは、免疫力や体力が低い高齢者、心臓病や糖尿病等の内臓疾患を患っていた人たちであり、子供や健康で健全な大人には殆ど感染がみられなかった※。
(※感染したケースでは、軽度の呼吸器症状を示した程度だった。)
SARS-CoVは、当時は新型のウイルスが原因だったため、対処法が確立されておらず、現地の病院においても院内感染を引き起こし、感染を拡大させた。
また、咳やくしゃみなどの飛沫感染で伝播するため、人から人へ感染しやすいことも猛威をふるった原因のひとつである。
SARS-CoVの根本原因(病原体)は、キクガシラコウモリのコロナウイルスが変異して人間に感染するようになったと考えられている。
(キクガシラコウモリから、SARS-CoVに類似したウイルスが発見されているため。)
キクガシラコウモリは、人家に住み着くこともあるため、コロナウイルスに感染したコウモリの糞が乾燥して風で空気中に舞い上がり、それを吸った人間が感染してしまった可能性がある。
また、中国にはコウモリを食べる食文化があるため、極めて稀なケースとして、キクガシラコウモリが捕らえられて食され、人間の体内で新型のコロナウイルスに変異したとも考えられるが、推測の域を出ない。
余談だが、SARS-CoVは、遺伝学上ではβコロナウイルスに分類される。
MERSコロナウイルス
いわゆる、MERS-CoV(中東呼吸器症候群コロナウイルス)で、2012年頃にサウジアラビアで発生したのが発見され、その後数年間、世界中に少しずつ感染が拡大した。
MERS-CoVは、飛沫感染によって広まるが、ウイルスの感染力がそれ程高くないため、感染の拡大は緩やかであった。
しかしながら、2015年の韓国では、中東帰りの1人の感染者から186人へ伝播するというスーパースプレッドが病院内で発生したことで大きなニュースとなった。
MERSの根本原因(病原体)は、ヒトコブラクダのコロナウイルスで、それが人間に感染すると重症肺炎をひきおこすと考えられている。
サウジアラビアの住人の中には、潜在的にMERS-CoVに対する抗体を体内に持っている人がいるため、感染しても症状が出ない潜在患者が数万人いると推測されている。
ちなみに、重症化した人の多くは、基礎疾患(糖尿病 慢性心疾患 慢性肺疾患 慢性腎疾患 等)を以前から患っていたことが判明しており、この点に関しては、SARSと同じと言える。
余談だが、MERS-CoVは、SARS-CoV等と同じく、遺伝学上ではβコロナウイルスに分類される。
2019-nCoV(新型コロナウイルス)
2019年末期ごろから2020年初期にかけて、中国湖北省武漢市で発生・発見されたコロナウイルス。
2022年末期ごろまで全世界に蔓延し、爆発的に流行した。
・動物コロナウイルス
コロナウイルスは人間だけでなく、動物にも普通に感染し、様々な疾患を引き起こす。
犬や猫のペットはもちろんのこと、ウシ、ブタ、ニワトリ、ウマ、アルパカ、ラクダなどの家畜や、野生動物のシロイルカ、キリン、フェレット、スンクス、コウモリ、スズメにも感染し、それぞれの動物から、固有のコロナウイルスが検出されている。
大抵は、感染しても軽い症状(咳や下痢など)で済むことがほとんど。
しかしながら、死に至る程の酷い症状を引き起こす動物コロナウイルスもある。
家畜の致死性コロナウイルス
- IBV(鶏伝染性気管支炎ウイルス)
- PEDV(豚流行性下痢ウイルス)
- TGEV(豚伝染性胃腸炎ウイルス)
ペットの致死性コロナウイルス
- FIPV(猫伝染性腹膜炎ウイルス)
ちなみに、動物実験においてではあるが、MHV(マウス肝炎ウイルス)も致死性が高いと確認されている。
なお、それぞれのコロナウイルスは、固有性(種の特異性)が高いため、種を超えて他の動物に感染することはほぼ無いとされている。
(変異して別のコロナウイルスにならない限り、ほぼ無いと考えられている。)
・コロナウイルスの予防法
- ウイルス対策マスクを着用する。
- 帰宅したら手を洗い、うがいをする。
- 咳やくしゃみをする時は、肘などで口と鼻をかばうこと。
手を使わない。
(手を使うと、手から他のものへウイルスが移り、そこへ触れた人に感染するため。) - 症状が出ている患者に近づかない。
要するに、インフルエンザの予防方法と同じである。
関連項目