免疫細胞の表面にある
タンパク質の一種
のこと。
ここで言う免疫細胞とはT細胞のことで、要するにリンパ球の一種である。
このPD-1というタンパク質は、
T細胞の免疫反応を制御している。
くだけた言い方をすると、
PD-1はT細胞の免疫センサーのような働きをしていると言ってもいい。
このPD-1が正常に働けば、
T細胞の免疫活動が正常に行なわれる。
しかし、癌細胞(悪性腫瘍)は、
PD-L1と呼ばれるタンパク質の一種を表面に持っている。
このPD-L1は、PD-1と結合することで、T細胞の免疫反応を抑制させる効果がある。
癌細胞は、寄ってきたT細胞のPD-1に蓋をする形でPD-L1を用いる。
そのため、T細胞は癌細胞を異物とみなすことが出来なくなる。
その結果、T細胞は癌細胞を攻撃しなくなってしまうワケである。
(T細胞の不活性化)
しかも、癌細胞からT細胞が離れていくワケではなく、癌細胞のそばで停滞するため、その分、T細胞が減るのと同じことになり、免疫力がその分低下することを意味する。
逆に言えば、PD-1またはPD-L1を制御すれば、T細胞は正常に免疫反応を行い、癌細胞を攻撃するということになる。
そこで開発されたのが、
抗PD-1抗体薬「オプジーボ※」である。
(※一般的には「ニボルマブ」と呼ばれている。)
このオプジーボは、あくまでも免疫チェックポイント阻害剤であり、直接癌細胞を攻撃する薬ではない。
オプジーボの役割は、PD-1の機能を邪魔することで、T細胞の免疫反応を邪魔されずに癌細胞を攻撃させるための薬である。
つまり、オプジーボを適切に投与することで、自己の免疫力そのもので癌細胞を撃退することが可能になるというワケである。
・ノーベル医学生理学賞の受賞
PD-1は、1992年、当時の京都大学の本庄佑(ほんじょ たすく)教授の研究室のメンバーによって発見された。
命名者は、当時京都大学の大学院生であった石田靖雅氏らであった。
このPD-1の発見によって、
がん治療薬の「オプジーボ」が開発されるきっかけとなった。
そのため、発見の功績を称え、
本庄佑氏は2018年のノーベル医学生理学賞を受賞した。
(受賞時は京都大学名誉教授。)
米テキサス大学のジェームズ・アリソン博士との共同受賞であった。
関連項目
なし