「世界を一つの家のように平等にまとめる」
ということ。
一見すると、「人類、皆兄弟」的な、仲の良い平和的なイメージがある。
しかしながら、かつての太平洋戦争中の日本では、八紘一宇は、
他の国を侵略・征服して
日本国一つにまとめてしまおう
という、排他的軍国主義思想を現した言葉として使われた。
つまり、八紘一宇という言葉は、かつての大日本帝国時代に掲げられた、軍国主義的スローガンに使われた言葉であった。
・八紘一宇の本来の意味
そもそも八紘一宇の本来の意味は、
「天下の民は全て平等なので、一つの家の家族のように仲良くしよう。」
というものだった。
つまり、侵略的な意味合いは一切ない言葉だった。
歴史的には、この言葉が使われるようになったのは、1937年(昭和12年)ごろの国会。
当時の国会では、「八紘一宇の精神」というフレーズで頻繁に使われていた。
その時の八紘一宇の意味は、「国民みんなで頑張ろう」という溌溂(はつらつ)としたものだった。
しかしながら、時代の流れと共に大東亜共栄圏構想※が現実化すると、「八紘一宇」が本来の意味とは違った、
「日本を中心にアジア諸国でまとまろう」
という意味で使われるようになった。
(※欧米の植民地支配からアジア諸国を解放し、日本を中心にアジア諸国で共存共栄することを目的とした構想。)
やがて軍国主義がエスカレートし、太平洋戦争が始まると、八紘一宇の意味はすっかり形を変え、
「日本の下に世界を一つにする」
という、日本の侵略行為を正当化するような危険思想を表す意味にまで発展した。
・GHQによる公的な使用禁止
要するに、八紘一宇という言葉は、日本の侵略行為を正当化するような危険思想を持った軍国主義的スローガンに使われた。
そういう経緯があったため、
終戦後、GHQは八紘一宇という言葉を公的に使用することを禁止した。
GHQはその見せしめとして、
平和台公園(宮崎県宮崎市)にある八紘之基柱に刻まれていた八紘一宇の文字を削らせた。
それ以来、八紘一宇はタブーとされ、日本の国会や放送などで公的に使われることは無くなった。
・禁を破った国会議員
GHQによって禁止されて以来、
八紘一宇という言葉が使われることは全くなかった。
しかし、2015年3月16日、その禁が破られた。
その禁を破ったのは、
当時の参議院議員の三原じゅん子さん。
具体的には、当時の参議院予算委員会で
「八紘一宇の理念のもとに、世界が一つの家族のようにむつみあい、助け合えるような経済、税の仕組みを運用することを確認する崇高な政治的合意文書のようなものを、安倍総理こそが世界中に提案していくべきだと思う」
(引用元:朝日新聞DIGITAL)
という内容を言及した。
彼女は八紘一宇という言葉を
本来の良い意味で使ったと考えられる。
しかしながら、この言葉の使用について、当時のマスコミやネット上でも騒がれ、物議を醸した。
三原さんは、戦争を知らない世代の人。
しかも、八紘一宇という言葉は、GHQによって公的使用禁止にされたので、この言葉自体がほとんど滅語と化していたともいえる。
なので、八紘一宇という言葉が放送禁止用語になっていたこと自体を、彼女は知らなかったんじゃないかとも考えられる。
批判がある一方で、旧き政治家たちは、
八紘一宇という言葉を、彼女が使ったこと自体に驚いて感心していた
ようだった。
悪い意味で使ったワケではないので、むしろ“八紘一宇”という言葉を知っていた三原さんのボキャブラリーの多さを評価するべきである。