サーキュラーエコノミー(英: circular economy )とは、
循環経済(じゅんかんけいざい)
のこと。
製品・素材・資源を可能な限り循環させ、廃棄物を極力発生させない持続可能な経済システムを目指すもので、従来の「作って捨てる」一方通行型の経済活動(リニアエコノミー)からの脱却を目指すための経済システムのモデルである。
2015年12月に、EUが公表した政策パッケージであり、それを受けて世界的に「サーキュラーエコノミー」の概念が広まった。
■なぜ今、サーキュラーエコノミーが重要なのか?
◆地球環境の悪化と資源問題
近年、地球温暖化や生物多様性喪失などの環境問題は深刻化しており、人類の活動が地球環境に大きな負荷を与えていることが明らかになっている。
特に、従来の「作って捨てる」一方通行型の経済活動(リニアエコノミー)は、大量の資源を採掘・消費し、廃棄物を大量発生させるため、環境問題の主要な原因の一つとなっている。
また、人口増加や経済成長に伴い、資源の枯渇も懸念されている。
このままのペースで資源を消費し続ければ、将来的に資源不足が深刻化し、経済活動や社会生活に支障をきたす可能性があると言える。
◆サーキュラーエコノミーの必要性
前述のような状況を打破し、持続可能な社会を実現するためには、従来のリニアエコノミーから脱却し、資源を循環させ、廃棄物を極力発生させないサーキュラーエコノミーへの転換が不可欠である。
サーキュラーエコノミーは、以下の点で従来のリニアエコノミーよりも優れている。
- 環境負荷の低減:資源の使用量と廃棄物量を削減することで、環境への負荷を低減することができる。
- 資源の有効活用:資源を循環させることで、有限な資源を効率的に活用することができる。
- 経済成長:新たなビジネスモデルや市場が創出されることで、経済成長を促進することができる。
- 雇用創出:サーキュラーエコノミー関連の産業が発展することで、雇用創出につながる。
■サーキュラーエコノミーの3つの原則
サーキュラーエコノミーは、従来の「作って捨てる」一方通行型の経済活動(リニアエコノミー)から脱却し、資源を循環させ、廃棄物を極力発生させない持続可能な経済システムを目指すものである。
その基盤となるのが、以下の3つの原則である。
- リデュース(Reduce):資源の使用量を減らす
- リユース(Reuse):製品を繰り返し使用する
- リサイクル(Recycle):廃棄物を資源として再利用する
1. リデュース(Reduce)
資源の使用量を減らすことを意味する。具体的には、以下の取り組みが考えられる。
- 製品設計の見直し:長持ちする、修理しやすい、軽量な製品を設計する。
- 製造工程の改善:エネルギーや材料の使用量を削減する。
- 消費量の抑制:必要なものだけを購入し、無駄な消費を控える。
2. リユース(Reuse)
リユースとは、製品を繰り返し使用することを意味する。具体的には、以下の取り組みが挙げられる。
- 修理・メンテナンスの促進: 製品を修理したり、メンテナンスしたりして、寿命を延ばす。
- 中古品の販売・購入: 中古品を販売したり、購入したりする。
- シェアリングエコノミーの活用: 製品を所有するのではなく、必要な時に必要なだけ利用する。
リユースは、製品を廃棄物としてではなく、資源として捉えることで、資源の有効活用につながる。
3. リサイクル(Recycle)
リサイクルとは、廃棄物を資源として再利用することを意味する。
具体的には、以下の取り組みが挙げられる。
- 素材のリサイクル: プラスチック、金属、紙などの素材をリサイクルする。
- 有機物の堆肥化: 食品残渣や庭の剪定枝などの有機物を堆肥化する。
- 建設廃材のリサイクル: コンクリートや鉄筋などの建設廃材をリサイクルする。
リサイクルは、廃棄物を新たな製品に生まれ変わらせることで、資源の循環を実現することが可能となる。
以上のように、サーキュラーエコノミーの3つの原則は、資源を効率的に活用し、廃棄物を削減し、持続可能な社会を実現するための重要な指針である。
これらの原則を理解し、実践していくことが、私たち一人ひとりに求められている。
■サーキュラーエコノミーの仕組み
サーキュラーエコノミーの仕組みについては以下の通りである。
1. 製品ライフサイクル全体を考慮した設計
サーキュラーエコノミーでは、製品の製造から廃棄までのライフサイクル全体を考慮した設計が肝要である。
具体的には、以下の点に配慮する必要がある。
- 耐久性と修理可能性:製品を長持ちさせ、修理しやすい設計にすることで、廃棄物量を減らすことができる。
- 分解可能性とリサイクル可能性:製品を分解しやすく、リサイクルしやすい素材を使用することで、資源を再利用しやすくなる。
- 有害物質の使用制限:製品に有害物質を使用しない、または使用量を最小限に抑えることで、環境への負荷を低減することができる。
2. 生産・消費・廃棄・循環の各段階における効率化
サーキュラーエコノミーを実現するためには、生産・消費・廃棄・循環の各段階における効率化が不可欠である。
製造
製品を製造する段階において、以下の点を考慮する必要がある。
- エネルギー効率:エネルギー効率の高い製造方法を採用する。
- 資源効率:資源を効率的に使用する。
- 廃棄物削減:廃棄物発生量を削減する。
- 有害物質:有害物質の使用を避ける。
- 地域社会:地域社会に貢献する。
使用・消費
製品を使用・消費する段階において、以下の点を考慮する必要がある。
- 製品の選択:環境負荷の低い製品を選択する。
- 製品の修理・メンテナンス:製品を定期的に修理・メンテナンスする。
- 製品の共有:製品を必要とする人と共有する。
- 製品の再利用:製品を再利用する。
- 製品のリサイクル:製品をリサイクルする。
廃棄
廃棄においては、廃棄物は極力発生させないように努める必要があるが、発生せざるを得ない場合は、以下のいずれかの方法で処理されます。
- エネルギー回収:廃棄物を燃焼してエネルギーを回収する。
- マテリアルリサイクル:廃棄物を原材料に戻して再利用する。
- 最終処分:廃棄物を安全に処分する。
循環
使用・消費された製品は、以下のいずれかの方法で循環されます。
- 修理・メンテナンス:製品を修理して再利用する。
- 再製造:製品を分解し、部品を再利用して新しい製品を製造する。
- アップサイクリング:製品を元の品質よりも高い品質の製品にリサイクルする。
- マテリアルリサイクル:製品を原材料に戻して再利用する。
3. シェアリングエコノミーやサービスとしての提供
製品を所有するのではなく、必要な時に必要なだけ利用するシェアリングエコノミーや、製品ではなくサービスとしての提供もサーキュラーエコノミーの重要な要素です。
シェアリングエコノミーは、製品の使用率を高め、資源の無駄を減らすことができる。
また、製品ではなくサービスとしての提供は、製品の寿命を延ばし、廃棄物量を削減することができる。
4. 関係者間の連携とイノベーション
サーキュラーエコノミーを実現するには、政府、企業、消費者、NGOなど、様々な関係者が連携し、協力することが重要な要素である。
また、新しい技術やビジネスモデルの開発も必要。
政府は、法制度や政策の整備、資金援助、情報発信などを通じて、サーキュラーエコノミーの推進を支援することが望ましい。
企業は、製品設計の見直し、リサイクル事業への参入、消費者への啓蒙活動などを通じて、サーキュラーエコノミーに取り組むことが可能である。
消費者は、リユースやリサイクル製品の購入、サーキュラーエコノミーを意識した行動などを通じて、サーキュラーエコノミーの実現に貢献することができる。
■サーキュラーエコノミーのメリット
サーキュラーエコノミーは、環境問題解決、資源有効活用、経済成長の三つの側面から、多くのメリットをもたらすと考えられている。
1. 環境負荷の低減
サーキュラーエコノミーの最も重要なメリットは、環境負荷の低減である。
具体的には、以下の効果が期待できる。
- 資源の使用量削減: 製品を長持ちさせ、修理・メンテナンスしやすくすることで、原材料の採掘量を削減できる。
- 廃棄物量削減: 製品をリユース、リサイクルすることで、廃棄物量を大幅に削減できる。
- エネルギー消費量削減: 製造工程や物流過程におけるエネルギー消費量を削減可能。
- 温室効果ガス排出量削減: 化石燃料の使用量を減らすことで、温室効果ガス排出量を削減できる。
- 生物多様性保全: 資源採掘による自然環境破壊を抑制し、生物多様性を保全することが可能となる。
2. 資源の有効活用
地球上の資源は有限であり、持続可能な社会を実現するためには、資源を効率的に活用することが重要です。
サーキュラーエコノミーは、以下の点で資源の有効活用に貢献します。
- 希少資源への依存度低下: リサイクルを通じて、希少資源への依存度を低減。
- 新たな資源の発見: 廃棄物の中から新たな資源を発見することができる。
- 資源価格の安定化: 資源の需給バランスを調整することで、資源価格の安定化に貢献できる。
3. 経済成長
サーキュラーエコノミーは、新たなビジネスモデルや市場の創出を促進し、経済成長に貢献できる。
具体的には、以下の効果が期待できる。
- 新たな産業の創出: リサイクル、リユース、シェアリングなどのサーキュラーエコノミー関連産業が発展します。
- 雇用創出: サーキュラーエコノミー関連産業の成長により、雇用創出につながる。
- 企業の競争力強化: 環境負荷低減や資源効率化に取り組む企業は、競争力強化を図ることができる。
- 地域経済の活性化: 地域内で資源を循環させる取り組みは、地域経済の活性化に貢献できる。
4. その他のメリット
上記以外にも、サーキュラーエコノミーには以下のようなメリットがある。
- 消費者にとっての選択肢拡大: リユース、リサイクル製品など、環境負荷の低い製品の選択肢が増える。
- 健康リスクの低減: 有害物質の使用を減らすことで、健康リスクを低減可能である。
- 地域社会への貢献: 地域内で資源を循環させる取り組みは、地域社会の持続可能性を高めることができる。
- 将来世代への責任: 資源を浪費せずに未来の世代に引き継ぐことが可能。
■サーキュラーエコノミーのデメリット・課題
サーキュラーエコノミーは、多くのメリットをもたらす一方で、いくつかのデメリットや課題が存在する。
1. コスト
サーキュラーエコノミーを実践するには、以下のコストがかかります。
- 製品設計変更コスト: 製品を長持ちさせ、修理・メンテナンスしやすくするためには、製品設計を変更する必要がある。
- リサイクルコスト: 廃棄物をリサイクルするには、収集、選別、処理などのコストがかかります。
- インフラ整備コスト: リユース、リサイクル製品の流通や修理サービスを提供するためには、新たなインフラを整備する必要がある。
- 消費者教育コスト: 消費者がサーキュラーエコノミーの理念を理解し、協力できるように、消費者教育を行う必要がある。
これらのコストは、初期投資として企業や政府にとって大きな負担となりえる。
特に、中小企業にとっては、これらのコストを負担することが難しい場合がある。
2. 技術
サーキュラーエコノミーを実践するには、以下の技術が必要である。
- 製品の寿命延長技術: 製品を長持ちさせるための技術が必要
- 分解・再利用技術: 製品を分解し、部品を再利用するための技術が必要
- リサイクル技術: 廃棄物を効率的にリサイクルするための技術が必要
- シェアリングエコノミー: 製品やサービスを共有するためのプラットフォームが必要
これらの技術はまだ十分に開発されておらず、さらなる技術革新が必要です。特に、複雑な製品のリサイクルや、高品質なリサイクル製品の製造には、高度な技術が必要となります。
3. 制度
サーキュラーエコノミーを実践するには、以下の制度が必要となる。
- 拡張生産者責任制度: 生産者が廃棄物処理の責任を持つ制度
- グリーン調達制度: 環境負荷の低い製品を購入する制度
- リサイクル促進制度: リサイクル業者の育成やリサイクル技術の開発を支援する制度
- 消費者保護制度: 消費者が安心してリユース、リサイクル製品を購入できるようにする制度
4. 消費者意識
サーキュラーエコノミーを実現するには、消費者の意識改革が必要です。具体的には、以下の点が必要です。
- 環境負荷への意識: 環境負荷の低い製品を選択する意識が必要です。
- リユース、リサイクル: 製品を繰り返し使用したり、廃棄物をリサイクルしたりする意識が必要です。
- シェアリングエコノミー: 製品やサービスを共有する意識が必要です。
- 修理・メンテナンス: 製品を修理して長く使う意識が必要です。
消費者がこれらの意識を持ち、行動に移さなければ、サーキュラーエコノミーの成功は難しくなる。
5. その他のデメリット
上記以外にも、サーキュラーエコノミーには以下のようなデメリットが指摘されています。
- 経済成長の鈍化: 資源の使用量を減らすことで、経済成長が鈍化する可能性がある。
- 雇用削減: 製造業を中心に、雇用が削減される可能性がある。
- 社会格差の拡大: リユース、リサイクル製品の価格が高価な場合、低所得者層が利用できなくなる可能性がある。
■サーキュラーエコノミーを取り入れている日本の企業
近年、環境問題への意識の高まりから、サーキュラーエコノミーに取り組む企業が増加傾向にある。
以下は、サーキュラーエコノミーに取り組んでいる日本の企業の1例である。
(2024年4月12日現在)
イオン株式会社
イオン株式会社は、プラスチック資源循環プロジェクト「Rethink Plastic」を推進しています。
このプロジェクトでは、プラスチック製のレジ袋、マイバッグ、食品トレーなどのリサイクルに取り組んでいます。
セブン&アイ・ホールディングス株式会社
セブン&アイ・ホールディングス株式会社は、セブン-イレブン店舗で回収したペットボトルをリサイクルして、店舗で販売する飲料のボトルなどに再利用する「セブン-イレブン リサイクルループ」を展開しています。
ユニクロ株式会社
ユニクロ株式会社は、古着を回収してリサイクルする「Re.Uniqlo」プロジェクトを展開しています。
回収された古着は、新しいユニクロ製品の原料として活用されています。
ソニー株式会社
ソニー株式会社は、プラスチックの使用量削減、リサイクル素材の使用促進、製品の修理・メンテナンスサービスの提供など、様々な取り組みを通じてサーキュラーエコノミーに取り組んでいます。
トヨタ自動車株式会社
トヨタ自動車株式会社は、自動車のリサイクル率向上、再生部品の使用促進、次世代型電池の開発など、様々な取り組みを通じてサーキュラーエコノミーに取り組んでいます。
これらの企業以外にも、多くの企業がサーキュラーエコノミーに取り組んでいる。
今後、ますます多くの企業が、サーキュラーエコノミーに取り組んでいくことが期待されている。
■サーキュラーエコノミーのまとめ
サーキュラーエコノミーとは?
- 従来の「作って捨てる」一方通行型の経済活動(リニアエコノミー)から脱却し、資源を循環させ、廃棄物を極力発生させない持続可能な経済システムを目指す。
- 環境問題解決、資源有効活用、経済成長の三つの側面から、多くのメリットをもたらす。
3つの原則
- リデュース(Reduce): 資源の使用量を減らす。
- リユース(Reuse): 製品を繰り返し使用する。
- リサイクル(Recycle): 廃棄物を資源として再利用する。
仕組み
- デザイン: 製品やサービスを設計する段階において、耐久性、修理・メンテナンス、分解・再利用、リサイクル、毒性などを考慮する。
- 製造: エネルギー効率、資源効率、廃棄物削減、有害物質、地域社会への貢献などを考慮する。
- 使用・消費: 製品選択、修理・メンテナンス、共有、再利用、リサイクルなどを考慮する。
- 循環: 修理・メンテナンス、再製造、ダウンサイクリング、アップサイクリング、マテリアルリサイクルなどを行う。
- 廃棄物: 最終処分せず、エネルギー回収、マテリアルリサイクルなどを行う。
メリット
- 環境負荷の低減
- 資源の有効活用
- 経済成長
- 消費者にとっての選択肢拡大
- 健康リスクの低減
- 地域社会への貢献
- 将来世代への責任
デメリット
- コスト
- 技術
- 制度
- 消費者意識
- 経済成長の鈍化
- 雇用削減
- 社会格差拡大
課題
- 経済的な課題:初期投資、コスト負担、経済成長
- 技術的な課題:製品設計、リサイクル、新たな技術
- 制度的な課題:法規制、税制、国際協力
- 社会的な課題:消費者意識、雇用、社会格差
- その他の課題:時間、複雑性
克服に向けて
- 政府:法規制整備、資金援助、消費者教育など
- 企業:製品設計見直し、リサイクル技術開発、消費者啓蒙活動など
- 消費者:環境負荷意識向上、リユース・リサイクル製品購入など
日本企業の取り組み
- イオン:Rethink Plasticプロジェクト
- セブン&アイ:セブン-イレブン リサイクルループ
- ユニクロ:Re.Uniqloプロジェクト
- ソニー:プラスチック使用量削減、リサイクル素材利用促進、修理・メンテナンスサービス提供
- トヨタ:自動車リサイクル率向上、再生部品利用促進、次世代型電池開発
サーキュラーエコノミーは、環境問題解決、資源有効活用、経済成長の三つの側面において、持続可能な発展を実現するための重要な概念です。
課題もありますが、多くのメリットをもたらすことから、世界中で注目を集めています。
企業、政府、消費者それぞれが協力してサーキュラーエコノミーに取り組むことで、より良い未来を築くことができるでしょう。
■関連項目
■参考サイト様
環境省
https://www.env.go.jp/content/000116997.pdf
経済産業省
Ellen MacArthur Foundation