ソフトウェアの機能をインターネット経由で
提供するサービスモデル
のことを言う。
SaaS(サース)の綴りは、英語の Software as a Service の略語。
直訳すると、「サービスとしてのソフトウェア」。
つまり、ソフトウェアの機能だけをサービスとして提供するという意味である。
SaaSは、インターネット上にあるコンピューターの機能を離れた場所の端末から利用できる、いわゆる「クラウドコンピューティング」の一形態である。
本来、ソフトウェアは、PCやスマホなどの端末やサーバーにインストールすることで機能やサービスを提供するものだが、SaaSは、ユーザーがソフトウェアのインストールをする必要が無く、端末からネット上にあるサービス提供サイトにつなぐだけで、ソフトウェアの機能の恩恵だけを受けることができる。
つまり、SaaSとは、インターネットを介して、ユーザーがソフトウェアの機能だけを、必要なときに必要な分だけ利用することができるという画期的なサービスである。
主なSaaSのサービスとしては、一般的には事務系のソフトウェア全般をクラウドで提供するといったものが挙げられる。
会計業務系なら、freee 、Clovernet ERPクラウド などが有名どころ。
また、近年ではAIを活用した各種サービスが挙げられる。
文章作成系AIなら、ChatGPT、Bard(Google)、Cohesive など。
画像作成系なら、Leonardo.Ai、DIFFUSION ART 、Clipdrop、Kaiber など。
今後は、あらゆるSaaSにAIが導入されていく流れになるだろう。
・SaaSの仕組み
SaaSの主な仕組みについて解説。
◆マルチテナントアーキテクチャ
SaaSは、複数のユーザーが同じインフラとアプリケーションを共有する、マルチテナントアーキテクチャの技術を使用している。
このアーキテクチャでは、複数のテナント(ユーザー)が同じアプリケーションインスタンスを共有し、それぞれのテナントは独立してデータや設定を管理する。
これにより、コスト効率が向上し、リソースの最適化が図られるようになる。
複数のユーザーが同時接続し、それぞれ使用するアプリケーションを選んで使用できる点は、企業にとって、非常に大きな生産性の向上につながると言える。
◆オンデマンドなサービス提供
SaaSは、ユーザーが必要なときに必要な機能やリソースを利用できる。
ユーザーはアプリケーションにログインし、インターネットを通じてサービスを利用するだけで、データの保存や処理、コラボレーションなどの機能を即座に利用できる。
◆セキュリティとプライバシー
SaaS提供者は、セキュリティとプライバシーの管理に重点を置いている。
データの通信は通常、暗号化された接続で転送され、データセンターやクラウド環境では物理的なセキュリティ対策やアクセス制御が実施される。
また、バックアップや災害復旧などのデータ保護措置もSaaSの提供側によって実施される。
・SaaSのメリット
SaaSは、ユーザーがソフトウェアをインストールしたり、サーバーを管理したりする必要がなく、必要なときに必要な機能を利用することができる。
故にSaaSには、従来型のソフトウェアに比べて、以下のメリットがある。
- 初期費用が安い
(ユーザーがソフトウェアを買う必要が無く、サーバーの管理をする必要もない) - 運用コストが安い
(月額数百円~数千円で済む。専用のセキュリティソフトも必要ない。) - 常に最新のバージョンを利用できる
(アップデートはサービス提供側が行うので、ユーザーは何もしなくて良い) - セキュリティが万全
(セキュリティ対策はサービス提供側が行う。データ通信は暗号化されて行うため、非常に安全。) - 使いやすい
(主にWebブラウザから使用できるようになっている。またサービス提供側がわかりやすいマニュアルを完備していることが多い。) - データのバックアップ
(災害復旧などのデータ保護措置も提供される。会社が被災してPCが壊れても、データそのものはサービス提供側にあるので問題なし。)
以上のことから、SaaSは、企業のITインフラを変革し、効率化・合理化するための有効な手段と言える。
故に、企業の生産性を高めることが可能となる。
特に、中小企業にとっては、初期費用や運用コストを抑えながら、最新のIT技術を導入することができるため、可用性の高いサービスになりえる。
・SaaSの導入事例
SaaSの導入事例としては、以下のようなものが挙げられる。
- 営業支援システム(SFA)
- 顧客関係管理システム(CRM)
- 電子メールシステム
- 文書管理システム
- 会計システム
- 人事労務システム(HRM)
- 顧客サポートシステム
- マーケティングシステム
◆営業支援システム(SFA)
SFAとは、Sales Force Automationの略称で、営業活動の効率化と生産性向上を目的としたシステムです。
SFAは、顧客情報や商談情報、営業活動の進捗状況などを一元管理することで、営業担当者が効率的に営業活動を行うことができるように支援します。
これをSaaSで行えるようになれば、スマホなどのモバイル端末から、リアルタイムで情報を閲覧・確認することが可能となるため、非常に利便性が高まる。
日本では、Knowledge Suite、kintone などのSaaS提供サービスがある。
◆顧客関係管理(CRM)
CRMとは、Customer Relationship Management の略称、営業やマーケティングチームが顧客情報を管理し、営業活動を追跡するのに役立つ。
CRMをSaaSで提供してくれるサービスには、日本では GEOCRM.com や Sales Cloud などがある。
海外ではSalesforceやHubSpotなどが有名どころ。
これらのサービス提供者は、顧客の獲得からリテンションまでのサポートを可能にするため、非常に利便性が高い。
◆人事労務システム(HRM)
HRMとは、Human Resource Managementの略称で、人材を経営資源として捉え、有効活用するための仕組みを体系的に構築・運用することを意味する言葉である。
HRMをSaaSで提供すると、人事部門において人事情報の管理がしやすくなり、採用プロセスの自動化、従業員のトレーニングと開発、給与計算などが効率化されるようになる。
日本では、マネーフォワードやSmartHRなどが、人事労務管理のクラウドサービスとしては大手。
海外では、WorkdayやBambooHRなどが、人事管理におけるSaaSソリューションを提供している。
◆導入時の注意点
ただし、SaaSを導入する際には、以下の点を考慮する必要がある。
- 自社のニーズに合ったサービスを選ぶ
(不要なサービスを余分に提供されても使用しないため。) - セキュリティ対策を万全にする
(利用する社員のID・パスワードの漏洩防止。社内端末の不正利用の防止など。こればかりは自社で行う必要がある。) - サポート体制を確認する
(必要なサポートを常時提供してくれるかどうか。)
いかに高度な機能を提供されても、ほとんど使わないのであれば意味が無い。
その機能を年間にどの程度使用するのかを考慮したうえで導入する必要がある。
・SaaSの将来性について
SaaSは急速に成長しており、将来的にもさらなる発展が期待されている。
◆AIと機械学習の活用
SaaS提供者は、AIや機械学習の技術を組み込んで、ユーザーのデータから洞察を得たり、自動化された予測分析を提供したりすることが可能になる。
これにより、より効率的な意思決定やビジネスプロセスの最適化が現実的になる。
◆ IoTとの統合
インターネット・オブ・シングス(IoT)の普及により、SaaSはデバイスとの連携を強化することが予想される。
センサーデータやデバイスの制御をSaaSプラットフォームと統合することで、リアルタイムのモニタリングや遠隔操作などが実現可能となる。
◆カスタマイズ可能なソリューション
SaaS提供者は、顧客のニーズに合わせて柔軟なカスタマイズオプションを提供することが求められる。
ユーザー側は、特定の業界や業務プロセスに特化したソリューションを選択し、自社のニーズに合わせてカスタマイズできるようになると考えられる。
・まとめ
SaaSは、企業や組織にとって革新的なソフトウェア提供モデルであり、効果的なビジネスツールでもある。
故に、今後の企業の成長と競争力を高めるための重要な要素となる。
既に現在、CRM、人事管理、プロジェクト管理など、さまざまな業務領域において、SaaSは効果的なソリューションを提供している。
その低コスト、簡単な導入、柔軟性、セキュリティなどのメリットにより、多くの企業がSaaSを採用している。
今後は、AIや機械学習の活用により、より洞察に基づいた意思決定や自動化されたプロセスが可能になりえる。
更に、IoTとの統合により、デバイスとの連携が強化され、新たなビジネス機会が生まれると予測できる。
カスタマイズ可能なソリューションが求められることで、ユーザーは自社のニーズに合わせて柔軟にSaaSを活用することができるようになる。
SaaSは今後ますます進化し、ビジネスの効率化と競争力の向上に貢献するだろう。
しかし、進化に伴ったデータセキュリティやプライバシーの重要性も高まることとなる。
SaaS提供者は、セキュリティ対策やコンプライアンスへの取り組みを強化し、顧客の信頼を維持する必要がある。
SaaSの採用を検討する際には、ビジネスの要件やセキュリティ対策、カスタマイズ性などを総合的に評価し、最適なプロバイダとのパートナーシップを築くことが重要であると言える。
■関連項目
IaaS
クラウドコンピューティング
営業支援システム(SFA) 顧客関係管理(CRM)
人事労務システム(HRM)