日野皓正(ひの てるまさ)氏と
世田谷区の中学生のコラボで結成された学生ジャズバンド
のこと。
元々、世田谷区教育委員会は、子供の音楽の才能を開花させる目的で、世田谷区内在住の中学生を集めてバンドを結成し本格的な演奏会を開いていた。
そこで、著名なミュージシャンを講師として招き、中学生たちへの教育と指導を行っていた。
当時、世界的に有名なジャズトランぺット奏者の日野皓正(ひの てるまさ)氏がドリバンの講師として招かれ、学生たちへの指導を行った。
日野氏はドリバンの“校長”的な立場にあったという。
そして、2017年8月20日に日野氏のコンサート公演「日野皓正 presents “Jazz for Kids”」が行われた。
その公演の際、アンコール演奏の後半、ソロパートで暴走していたドラム奏者の男子中学生を、日野氏が往復ビンタした。
そのことがネットメディアで報道されたため、ドリバンのキーワードが、当時の検索キーワードランキングで急上昇した。
“熱い指導”か“体罰”か“暴行事件”か。
賛否両論が大きく分かれた一件だった。
・なぜビンタしたのか?
日野氏が男子中学生をビンタしたのは、アンコール演奏後のソロパートにおいて、ドラム演奏を暴走させたから。
本来、ソロパートは学生演奏者たちに、順番に少しずつ演奏させて観客に聴かせる感じで行われる。
しかし、男子中学生は自分の番が来ると、まるで自分のコンサートであるかのように振る舞い、他の楽器の学生たちを強引に演奏に付き合わせた。
雰囲気的に不味くなり、付き合わされた学生たちが演奏をやめても、男子中学生はドラムを叩き続けた。
日野氏が暴走したドラム演奏を止めさせるため、男子中学生からスティックを取り上げた。
しかし、その中学生は止まらず、素手でドラムを叩き始めたため、
「やめろ!お前のパートじゃないんだよ!」
と言いながら男子中学生の髪を掴み、往復ビンタした。
男子中学生の振る舞いは許される行為ではなく、4か月間にわたって親身に指導してきた日野氏にとっては、一緒に努力してきた他の学生たちへの裏切りに等しいと感じた。
そのため、日野氏は思わず手を出してしまったらしい。
・男子中学生はなぜ暴走した?
往復ビンタされた男子中学生は、映画「session」(2014年 米)を見て感化されていた模様。
映画の中で、不遇の主人公のジャズドラマーが、コンサート中に強引にドラム演奏を続けて他の演奏者・観客を引き込み、憎い指揮者までも巻き込んで会場全体を一つにしてしまうという感動のクライマックスシーンがあった。
それを自分の境遇と重ねてしまい、「日野皓正 presents “Jazz for Kids”」において、ソロパートのところで自分の番が来た際に、思わず暴走してしまったという。
往復ビンタされた男子中学生は、潔く自分の非を認めており、騒ぎが大きくなってしまったことについて深く反省していた。
コンサート終了後に日野氏と男子中学生は直に会話して和解しており、今回の件で、ドリバンの存在自体が危うくなったことについて、
「これでドリバンが無くなると悲しい。なくさないで」
と言ったという。
男子中学生の父親も、
「息子が悪い」
と言及していた。
男子中学生は、今後もドリバンに参加したいとも言っていたという。
・誤解を招いた言葉足らずな報道
常識的に考えて、演奏者が暴走したら他の演奏者や指揮者が暴走を止めることは当然のこと。
それは、カテゴリそのものが違うサーカスや劇団でも、演者が暴走すれば座長や劇団長がぶん殴って止めることはあり得る。
しかしながら、当時のネットメディアにおいて、男子中学生が暴走していた部分は報道されず、
「男子中学生をビンタして殴った」
という結果だけが切り取られて、
「世界的ジャズ演奏者が中学生に暴行!」
などと報道され、大きな騒ぎになってしまった。
今回の件は、
「誤解を招くような言葉足らずなマスコミの報道の仕方に問題があった。」
と言えよう。