- 人をさらうこと(誘拐・拉致・略取)
または
- 人をさらう人(誘拐犯・拉致者・略取者)
という意味。
時代劇など、古い時代設定の小説や映画、ドラマなどの中で使われる、非常に古い言葉。
明治初期頃までは一般的に使用されていたが、現代では、ほとんど一般的には使われない。
“誘拐”という、かどわかしよりも使いやすくて言いやすい言葉があるからだ。
ちなみに、かどわかしの動詞形は“かどわかす”で、同じく、人をさらう(誘拐する・拉致する)という意味である。
◆主な用法
「越前屋のお嬢さん、かどわかしにあったそうな。」
「おめえが、かどわかしだということは判っている。」
「この村では、女子供がよく、かどわかしに遭うらしいぜ。」
「跡取り息子をかどわかして、金を巻き上げりゃいいんよ。」
など。
・かどわかしの語源
かどわかしという言葉の語源は、
平安時代末期にまでさかのぼる。
かどわかしは、かどわかすの名詞形で、平安末期当時は“かどわす”という言葉だった。
しかし、時代を経て変形し、
室町時代には“かどわかす”という発音に変わった。
ちなみに、かどわかしを漢字で書くと、
- 拐かし
または
- 勾引かし
となる。
漢字の拐(かい)の字は、
人の手の骨を表す“咼(かい)”という漢字が変形したものである。
人の手の骨は複雑に絡み合ってできており、それ故に、この“咼“という字には、
- 複雑な手法で人を策にからめとったり騙したりする
という意味が込められている。
故に、かどわかしとは、
- 人をだまして金品を奪うこと
- 人をだまして連れ去ること
という意味となり、
拐という漢字が当てられているのである。
一方で、“勾引かし”の方の“勾引”は、
“かどい”とも読む。
人買い(人身売買を行う者)の別名である、“人勾引(ひとかどい)”から来ている。
漢字の勾(こう)には、捕まえるという意味がある。
勾の字の“ム”は、人の変形文字。
一方で、“勹”は、つつむという意味の漢字。
つまり、勾=“人をつつむ”→“人を捕まえる”と捉えることができる。
故に、勾引とは、
- 勾(つかまえ)て、引っぱっていく
という意味になる。
人買いは、主に誘拐によって人を集めて売りさばいていたケースがほとんど。
それ故、人買いの別名である“勾引”の漢字を“かどわかし”にあてるようになった。
以上のことから、
かどわかしに勾引かしという漢字もあてられているのである。
“拐かし”と“勾引かし”
どちらも表記として正しいが、
どちらが先かというと、
- 拐かしの方が先
ということになる。
・かどわかしの言葉が出てくる作品
◆小説
- かどわかし(宮部みゆき)
(収載図書:堪忍箱) - かどわかし(笹沢左保)
(収載図書:木枯し紋次郎―かどわかし)
(収載図書:かどわかし―帰って来た紋次郎) - かどわかし(沢田ふじ子)
(収載図書:禁裏御付武士事件簿―朝霧の賊)
(収載図書:高瀬川女船歌)
(収載図書:拷問蔵―公事宿事件書留帳 3) - かどわかし(峰隆一郎)
(収載図書:流れ灌頂) - かどわかし(井川香四郎)
(収載図書:縁切り橋―くらがり同心裁許帳) - かどわかし(逢坂剛)
(収載図書:陰の声―重蔵始末 5 長崎篇) - かどわかし(高橋克彦)
(収載図書:文明怪化―完四郎広目手控) - かどわかし 下っ引夏兵衛捕物控(鈴木英治)
(角川文庫)
など、多数。
◆映画
- 雷桜
(原作:宇江佐真理 監督:廣木隆一 主演:岡田将生) - 任侠東海道
(脚本:比佐芳武 監督:松田定次 主演:片岡千恵蔵) - ふり袖捕物帖 若衆変化
(原作:瀬戸口寅雄 監督:松村昌治 主演:美空ひばり) - 八日目の蝉
(原作:角田光代 監督:成島出 主演:井上真央)
など。
◆テレビドラマ
- 剣客商売
- 必殺仕事人(必殺シリーズ)
- 暴れん坊将軍
- 子連れ狼
- 隠密同心
など、多数。
◆アニメ・漫画
- さらい屋五葉
以上、様々な作品があり、今後も“かどわかし”の言葉が出てくる作品が登場すると思われるが、キリがないため、他の作品については記載しないので悪しからず。
関連項目
なし