功利主義(英語:utilitarianism)をわかりやすく言うと、
多くの国民が幸せで
苦痛が少ない政治(法律)
を行うべきという思想
のこと。
くだけた言い方をすると、
「幸せが多くて嫌なことが少ない政治をするべき。」
という思想が、功利主義である。
つまり、功利主義とは、
- 行動や決定は、効用(良いか悪いか 得か損かなどの結果)
によって判断されるべき
という帰結(結果)主義の一つである。
功利主義の最も有名な提唱者は、
イギリスの哲学者ジェレミ・ベンサム(1748年2月15日~1832年6月6日)である。
同じくイギリスの哲学者のジョン・スチュアート・ミル(1806年5月20日~1873年5月8日)も功利主義を継承し、発展させた学者として有名である。
特に、ベンサムの語った名フレーズ、
「最大多数の最大幸福」
は、功利主義の基本原理を端的に表す、
最も有名なスローガンである。
功利主義は、一般大衆のためになる思想として、現代の法思想や社会的倫理観の基本原理、または、それらの機軸として、主に民主主義国家の国々で脈々と受け継がれている。
しかしながら、功利主義は、すべての国や社会において有効ではなく、政治学や倫理学などの多方面から批判されている。
その理由は、
「幸福の基準は人それぞれであり、すべてを満たすことは不可能。」
だからである。
ましてや、国が違えば政治や法律も異なり、功利主義を実践することが必ずしも国民の利益や国益にならないということもあるからだ。
・ベンサムとJ・S・ミルの功利主義の違い
ベンサムとミルは、古典功利主義の代表であり、ミルはベンサムの功利主義を継承発展させている。
すなわち、ベンサムとミルは師弟関係のようなもの。
なので、彼らの功利主義は同じではないかと考えられなくもないが、実際には明確な違いがある。
ベンサムの功利主義は
- 量的快楽主義
であり、ミルの功利主義は
- 質的快楽主義
である。
量的快楽主義とは、
- 快楽(幸福)と苦痛(不幸)は量的に計算し
算出できる。
としたもの。
いわゆる、快楽計算である。
一方で、質的快楽主義とは、
- 快楽(幸福)と苦痛(不幸)は、
それらの質によって異なるため、
一概に量だけでは算出できない質の部分に着目。
といったものだった。
こうして挙げてみると、
ミルの質的快楽主義はベンサムの量的快楽主義と対立しているように思える。
しかし、実際には対立しておらず、
ミルは快楽計算を放棄せずに継承している。
ベンサムの快楽計算は、
功利主義の根幹的な部分であるため、
ミルは否定しなかったのだ。
つまり、快楽計算を継承しつつも、
独自の質的快楽主義を提唱したのである。
・選好充足型功利主義
選好充足型功利主義(選好功利主義)とは、
20世紀に誕生した新しい功利主義である。
その意味は、
「あらゆる選択肢の中で、
“最も好きな選択肢を可能な限り選好できるかどうか”
に判断基準を置いた功利主義。」
である。
“選好”とは、文字通り好んで選ぶこと。
つまり、
「大勢の人が好んで選べる選択肢が多ければ多いほど、良い社会(政治)である。」
と言っているのが選好功利主義である。
主な提唱者には、
- リチャード・マーヴィン・ヘア
(1919年3月21日~2002年1月29日) - ピーター・シンガー
(1946年7月6日~)
などがいる。
ベンサムやミルの古典功利主義との違いは、快楽の量や質を考慮しない(放棄している)点にある。