強力な麻酔薬
のこと。
基本的には、プロポフォールは鎮静剤の一種。
中枢神経の抑制効果があるので、睡眠を促す作用がある。
また、鎮痛剤としての効果もある。
使用方法は主に静脈への点滴で、患者の症状と状況に合わせて、点滴で適量を投与する。
プロポフォールの効果の作用時間は早く、投与すると、数十秒で効果が出る。
(反面、効果が切れるのも早い。)
そのため、全身麻酔薬の一種として使われることもある。
使用には細心の注意が必要な薬であるものの、医師や看護師がいつでも対応できる状態にあり、適切な使用量と投薬期間を間違わなければ、危険はなく非常に有効な薬である。
かつて、2009年6月25日に自宅で死亡した、KING of POPのマイケルジャクソン氏の死因はプロポフォールの過剰摂取が原因だった。
(火傷の後遺症を和らげるために常習的に使用していた。)
偉大なポップシンガーの死によって、プロポフォールの過剰摂取の危険性が世界に広く認知された。
また、2014年2月、当時の東京女子医大病院で起こった、プロポフォール過剰投与による2歳児の死亡事件※によって、当時の日本国内でプロポフォールへの関心度が高まった。
(※大人の2.7倍の量のプロポフォールが2歳児に投与されていた)
そのため、当時の検索エンジンの検索キーワードランキングで、一時的に上位に食い込んだ経緯がある。
当時のマスメディアによる報道によって、
「すごく危険な薬なんじゃないか?」
というイメージが流布されたプロポフォールだが、前述の2件のケースでは、プロポフォールの使用量を間違えたケースによる死亡である。
なので、適切な量と投与期間を間違わなければ危険は無いということを正しく認識する必要がある。
逆に言えば、
- どんな良薬も、度が過ぎれば毒になる
ということでもある。
・禁忌とされる使用
プロポフォールは効果の高い薬として重宝されている。
しかし、以下のケースでは、
プロポフォールの使用が“禁忌”とされている。
(今後の医学と医療の進歩によっては、禁忌でなくなる可能性もある。)
- 集中治療における人工呼吸中の鎮静中の小児への使用
- プロポフォールに対する過敏症が過去に確認された患者
- 妊産婦への投与※
※3の妊産婦へのプロポフォールの投与は、胎内の赤ちゃんへ移る可能性があり、安全性がハッキリとしていないので、使用は禁忌とされている。
しかしながら、産科麻酔のガイドラインで、規定以下のプロポフォール使用では小児に悪影響がない旨が記載されている。
そのため、病院側のサポート体制が整っている場合、帝王切開や超緊急時などにおいて、母体へ適量のプロポフォールが使用されることがある。
なお、授乳婦へのプロポフォールの投与も禁忌とされているが、これは母乳にプロポフォールが混入する可能性があるので、基本的には投与を避けるべきであるとしている。
しかしながら、治療上、授乳婦にプロポフォールを投与する必要がある場合は、プロポフォールが母体から抜けきるまでの間、赤ちゃんに授乳させないことで対応することが可能である。
・プロポフォールの副作用
プロポフォールは劇薬であるため、間違った量を投与(過剰投与)すると、以下のような副作用が出る危険性がある。
- 心拍数の激減
過剰な麻酔作用によって、
心臓の鼓動(ドクン、ドクン)がかなり遅くなる。
よって、心拍数が激減する。
- 血圧の極低下
心拍数が激減するので、
血液を全身に送る力もかなり弱まる。
よって、血圧も極低下する。
- 呼吸不全
過剰投与により、中枢神経系が過剰に抑制され、呼吸力そのものが低下する。
酷い時だと、呼吸そのものが止まってしまう。
当然、呼吸が止まると命に関わる。
要するに、間違った量を投与すると、
- 生命維持の根幹機能である
心臓の鼓動と呼吸がやられる
ので、死ぬ可能性があるということである。
まあ、そもそもプロポフォールは、万全の医療体制がある病院において、使用の必要性があるケースでのみ使用される。
よって、間違った過剰投与になることはまずなく、前述のような命に関わる副作用が起きることはまずない。
それに、心拍数低下や血圧の低下、呼吸不全が起こったとしても、対症療法※が確立されているので、それ程危険は無いと言える。
※血圧や心拍数の低下は昇圧薬や循環作動薬を使用することで対処可能。
プロポフォールは切れるのが早いので、エフェドリンやネオシネジンなどの一時的な軽い昇圧薬でも十分に対応可能。
呼吸の問題の多くは、換気量の減少や舌根沈下が原因なので、酸素のマスクを付けたり頭の向きを調整することで対応可能。
最悪でも、マスク換気や挿管をすれば対処可能とされている。
関連項目