犯罪に走る人の外見上の特徴
を示す言葉。
医学的には実在しない架空の症状であり、犯因症という言葉自体が造語である。
具体的な症状は、
“身体の過剰なエネルギーが人を犯罪へと駆り立てる要因となり、その兆候が外見(主に顔)に出る”
というもの。
その特徴の一つとして、
額にM字型の皺(しわ)ができる
ことが挙げられている。
・犯因症の出所は?
この犯因症という言葉は、フジテレビ系ドラマの一つ「無痛~診える眼~」(西島秀俊氏 主演)に出てくる。
その言葉が、
- いかにも医学的根拠があるかのようにドラマ中で語られる
ため、
「本当にそんな症状があるのか?」
と、当時話題になり、検索エンジンのキーワードランキングで、一時的に上位に食い込んだことがある。
しかし、現実には医学的根拠は無い。
まあ、視聴者が気になってしまう程の説得力が、このドラマにはあるということだろう。
ちなみに、このドラマの原作は、小説「無痛」。
この小説の著者である久坂部羊 氏は、犯罪心理学者のチェーザレ・ロンブローゾが提唱する「生来的犯罪人説」をヒントに犯因症という言葉を造り出した。
その生来的犯罪人説とは、
「犯罪者には生来の共通した身体的特徴がある」
というもの。
その身体的特徴とは、
“猿みたいな野性的な顔や原始人に近い顔”
というものだ。
ロンブローゾは、処刑された囚人の遺体を丹念に調査しつづけて、この結論に至った。
しかし、それはあくまでも統計的なものであって、一般人と犯罪者との身体的特徴との差異がほとんどないことが後年の調査によって判明した。
よって、生来的犯罪人説は、
現在では疑似科学的な位置付けになっている。
・私的考察
私が思うに、生来的犯罪人説が発表された19世紀は、冤罪も多かったのではないか。
よって、中には無実の罪で投獄され、囚人として、そのまま処刑されてしまった人も少なからずいると考える。
そんな囚人たちの遺体の身体的特徴を調べて統計をとっても、差異が見られないのは当然なのではないかと。
しかも、この生来的犯罪人説を端的に言ってしまうと、
外見が悪い奴=犯罪者
という図式ができてしまう。
いかに19世紀とはいえ、
こんな差別的な説がまかり通るワケがない。
人権擁護の意思が世界的に広まっている現代では尚更だ。
まあ、悪そうな外見の人が社会の中で差別的な処遇・待遇を受け、結局犯罪者になってしまうケースが当時はあったかもしれない。
しかしそれは、あくまでも後天的なものであって、生来的犯罪人説のような先天的なケースとは真逆である。
私は、この生来的犯罪人説が例え統計上ではあり得たとしても、この差別的な説を断じて認めたくない。
・犯因症が未来に使われるか?
この先、科学や医学の進歩で、
本当に犯因症と呼ばれるような犯罪に走る人間の兆候を、何らかの形で探知・検知できるようになるかもしれない。
例えば、街中の監視カメラにそのような機能があれば、犯罪の兆候が出てる人間を発見するのが極めて容易になるだろう。
それ自体は期待したいところ。
まあ、発見できたところで、
対処ができるかどうかは警察の管轄外。
何しろ、まだ犯罪をしていない人物を
「やりそうだから逮捕」
なんてことは、法律上できないからだ。
また、その時になっても、犯罪をしそうな兆候が出てることを“犯因症”と呼ぶかどうかまではわからない。
犯因症は、あくまでも造語。
この先、この言葉の使用が現実化するかは未知数といえる。
関連項目
なし