実際に働いた時間に関係なく、
“一定時間働いた”とみなす制度
のこと。
例えば、現行の労働基準法では、1日8時間、週に40時間が労働時間の原則であるが、実労働時間が1日3時間(週15時間)程度だったとしても、
“1日8時間(週に40時間)働きました”
とみなす制度が裁量労働制である。
元々、裁量労働制は一部の特殊な職業※のために採用された制度だった。
(※一級建築士、研究開発者、システムエンジニア、記者、編集者、デザイナー、プロデューサー、ディレクター、コピーライター、公認会計士、不動産鑑定士、弁護士など、時間のみでは成果を管理・評価しにくい専門職。)
しかし、時代と共に職業のダイバーシティ化(多様化)が進み、それに伴い、業務内容にも変化が訪れ、働き方自体も変わらざるを得ないケースが出てきた。
そのため、労働基準法は数度にわたって改正され、そのたびに裁量労働制を適用できる職業や業種が追加され、ついには、一般企業でも採用されるようになった。
裁量労働制は、一見メリットが大きいように思えるが、実際の仕事量や完成の時期(納期)までは労働者の自由にできない。
そのため、実質的に過剰労働(過労)に陥っているにもかかわらず、“規定の時間分しか働いていない”とみなされるデメリットもある。
例えば、1日15時間(週75時間)働いているのに、
“「1日8時間(週に40時間)分だけ、働きました」ということにされてしまい、残業代などの手当てが出ない。”
などの酷い待遇になってしまう危険性がある。
実際に、2014年~2017年にかけて、三菱電機で労災認定された男性社員5人が、裁量労働制で働いていたことが判明した。
5人は長時間労働によって、脳疾患や精神障害を引き起こしており、しかも、2人は過労自殺までしていたという。
その後、三菱電機は裁量労働制を全廃した。
・裁量労働制が話題になった経緯
元々、裁量労働制は、1987年(昭和62年)の労働基準法の改正時に初めて採用された制度だったが、世間一般への知名度は低かった。
数度にわたる労働基準法の改正時においても、裁量労働制の知名度はあまり高まらなかった。
しかし、2018年6月に安倍政権下で成立した働き方改革法案において、裁量労働制の調査の結果が実態とは大きく異なることが判明。
そのため、既にネット社会と化していた日本では、裁量労働制というキーワードが広く知られることとなった。
また、三菱電機の過労死事件など、裁量労働制のデメリットの部分が露見し、マスコミに大きく報道された。
そのため、裁量労働制のキーワードが当時の大手検索エンジンで検索され、キーワードランキングで上位に上がったことがあった。
関連項目